共同研究・競争的資金等の研究課題

1991年 - 1992年

ハードな金属イオンのホスフィン及びアルシン錯体の電気化学的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 一般研究(B)  一般研究(B)

課題番号
03453047
体系的課題番号
JP03453047
配分額
(総額)
7,000,000円
(直接経費)
7,000,000円

硬いルイス酸のCo(III)のホスフィン及びアルシン錯体を多数合成し,X線解析を含む構造決定,各種分光化学的性質とともに,電気化学的挙動を調べた。購入装置による酸化還元電位の決定にはなお多くの問題点が残されているが,いくつかの興味ある成果が得られた。一般にd^6型Co(III)錯体のHOMOは充填したdπ^6,LUMOは空のdσであり,それぞれのエネルギーは近似的に錯体の酸化,および還元電位に対応する。これら電位は錯体の電荷などにより大きく変わるが,両電位の差は配位子場吸収帯のエルネギーと極めてよい相関を示した。すなわち,吸収スペクトルと両電位の測定からdπ,dσのエネルギーが推定され,配位子のσー供与性,πー供与性,受容性を考察することができる。多数の同じ型のアミン,ホスフィン,アルシン錯体の測定から,還元電位がより負の場合は配位基のσー供与性が大きいと結論し,その順は-PMe_2>-NH_2〜-AsMe_2>-NMe_2であった。一方,アミンはπの相互作用がほとんど無いと考えられるから,これを基準にすると酸化電位は-PMe_2>-AsMe_2>-NH_2〜-NMe_2の順に小さくなり,πー供与によりCo-dπ軌道が不安定化していると結論した。配位子場合裂の大きさは-PMe_2>-AsMe_2>-NH_2>-NMe_2で上の順と異なることから,各配位子のCo(III)に対するσ,πの供与性,受容性をそれぞれ見積ることができた。Co(III)のような高酸化数のイオンには,軟らかい塩基のホスフィンやアルシンはπ受容よりもπ供与配位子として働いている。以上の一般的考察の他,いくつかの錯体について電気化学的還元による異性化など興味ある結果が得られた。しかし,なお一層の研究が必要である。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-03453047
ID情報
  • 課題番号 : 03453047
  • 体系的課題番号 : JP03453047