共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

極低温星間分子雲におけるH2Oガスの起源:CO-H2O氷からH2Oは脱離するか?

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
20K14534
体系的課題番号
JP20K14534
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

星間分子雲に存在するH2Oガスの起源は重要な天文学的興味となっている.分子雲に存在する微粒子(星間塵)は,その表面が極低温のH2O氷で覆われており,星間塵表面からの光脱離が有力な起源の候補とされている.一方で,実際の星間塵では,H2O氷の表面がCOなどの固体に覆われた二層構造の氷が存在しており,下層のH2O氷からの光脱離が起こるかは自明ではなかった.そこで,本研究ではCOとH2Oからなる二層構造の氷(CO-H2O氷)を実験的に作成し,光刺激脱離法と共鳴多光子イオン化法(PSD-REMPI法)を用いて,下層H2Oの脱離が起こりうるかを検証した.
2021年度は,H2O氷上に蒸着するCO固体の厚さを変化させ,PSD-REMPI法による下層H2O分子の検出実験を行った.10ケルビンの金属基板に試料ガスを暴露して,異なる厚さのCO-H2O氷を作成し,532nmレーザーの照射によりH2Oを脱離させた.532nmの光子は主に金属基板に吸収され,生じたフォノンの伝搬により氷表面から分子を脱離させうる.昨年度の予備実験では,まず純粋なH2O氷からのH2O分子の光脱離を確認し,さらに,H2O氷上に数分子層のCOを蒸着させたところ,H2Oの脱離量に大きな減少は観測されなかった.そこで本年度は,H2O氷を被覆するCO固体の厚さを変化させて測定を試みたところ,H2O収量の減少が観測された一方で,H2Oの脱離量はゼロにならず,およそ一定値で飽和する傾向が見られた.近年の研究でも,CO固体が,多孔質の構造を持つ結果が示されており,CO固体が持つ空隙を通じてH2Oが脱離している可能性が示唆された.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K14534
ID情報
  • 課題番号 : 20K14534
  • 体系的課題番号 : JP20K14534