基本情報

所属
横浜市立大学 医学部公衆衛生学 / 大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 准教授
国立国際医療研究センター 疫学・予防研究部 客員研究員
学位
博士(学術)(神戸大学)

J-GLOBAL ID
201401013074064720
researchmap会員ID
B000238835

現代社会にはさまざまな健康課題が山積しています。日本では、災害という突発的な問題も絶えません(自身も阪神・淡路大震災を経験しました)。少しでもその解決の後押しになればと思い、疫学研究者として日本や海外のフィールドで疾病予防のための研究、教育、社会活動を多くの人と協力しながら進めてきました。

 課題を解決するには、最善・次善と思われる方策を試していくしかありません。しかし、そもそも、どの課題から解決すべきなのか?どの解決策が良いのか?なぜ良いのか?試して効果はあったのか?

 そうしたことを考える時に、データがとても参考になります。

 人々の何のデータを、どのように集めれば、こうした疑問により正しく答えられるのか。

 そのヒントとなるのが、「疫学」という学問です。

(集めたデータをうまく調理するために、統計学やプログラミングの素養も大切です。)

 

私が大学を出た後に最初に取り組んだ研究のテーマは、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの内分泌・代謝疾患、そして精神疾患の予防です。日本人において、これらの疾患はどうすれば予防できるか?

 この疑問を解くために、身体活動(余暇の運動、筋トレなど)や睡眠などの生活習慣、働く人に特有の要因(例:徒歩・自転車通勤、仕事中の身体活動、長時間残業、交代勤務)などに着目し、職域多施設研究(J-ECOHスタディ)の大規模データを用いて、疫学的にその影響を検証・報告してきました。

 筋力トレーニングなどの昔から知られている運動だけでなく、徒歩・自転車通勤は、日本人においても肥満・糖尿病予防に役立つ可能性を示す知見が得られました。徒歩・自転車通勤は、地球環境の健康(ひいては人の健康)を守ることにも役立つことが期待されており、一挙両得となる可能性はあります。しかし、徒歩・自転車通勤を促進する「取り組み」が、そうした健康にどの程度役立つかについては、さらなる検証が必要ということもわかりました。

 コロナ後は、情報が集団にもたらす影響についても、公衆衛生や行動変容の視点から報告してきました。既存のマスメディアや政治・行政と言った発信者だけでなく、ソーシャルメディアといったツールからの情報発信が健康にもたらす影響について、詳細なデータはまだ乏しいことも浮かび上がりました。

 並行して、日本の風通しがよくなるように、領域横断的な取組を促進する活動も推し進めてきました。それまで関わったことのなかった領域(刑務所の医療、保険医学、衛生動物など)や、研究テーマ(研究者評価、人材育成)の新たな学びになり、つながりも増え、これまでなかった視点からの研究にも着手できました。一方で、医学全体に関わることについて若いうちから分野を越えて議論や発表できる公的な場は少ない課題を認識しました。

 公衆衛生学教室が2023年度より開始した「よこはま健康研究」では、横浜ならではの疾病予防・健康増進に関わるエビデンス創出に挑戦中です。

日本は研究力の低下が指摘されて久しいです。研究力を身につけて、人々の健康・生命に関わる社会課題の解決に挑戦したい方や、一緒に共同研究・活動をしてみたい方は、大学の門戸をぜひ叩いてください。

 公衆衛生学教室やヘルスデータサイエンス専攻では、疫学を中心としたデータサイエンスに関わる研究手法や研究マインドを学ぶことができます(予め疫学の本に目を通していただけるとよりスムーズです)。

 学生の皆様には、目先のことだけでなく、人類の長い歴史を踏まえた中・長期的なビジョンと全体最適の意識を持ってほしいと思っています。そうした上で、それぞれの持ち場で抱える課題や疑問などを倫理的に問題のない方法で科学的・論理的に検証し、過去の知見や利害関係者の意見なども踏まえながら、得られた結果をしっかり現場にフィードバックすることによって、医療現場の改善や健康な組織、社会づくりなどを進めていってほしいと考えています。

 単にデータを集めて分析するだけなら、いずれAIがすべてやってくれるかもしれません。だからこそ、最新の技術を活用しながらも、人間ならではの温かさ、リアルな人とのつながりを大切にしてほしいです。社会と対話を重ね、信頼関係を構築していくことを願っています。そのため、アクション・リサーチや市民参加型研究、普及・実装研究などの考え方もぜひ取り入れてほしいです。

 

現代社会には気候変動や生物多様性の喪失、食料・エネルギー危機、災害、戦争・紛争、技術革新、人口減少、人材育成など、新たな課題は尽きません。疫学的な知見を地道に積み重ねることで、ガイドラインの作成・改定や対策の推進にも貢献することができます。分野を問わず、健康・生命に関わる諸課題の解決に向けて向上心と情熱を持った方のお越しをお待ちしています。

 これから、どんな社会を実現したいですか?好きなことや得意なこと、できることを活かしつつ、自由な発想のもと、段階を踏んでより良い社会を創っていきましょう。


経歴

  14

委員歴

  23

論文

  137

MISC

  32

書籍等出版物

  2

講演・口頭発表等

  135

共同研究・競争的資金等の研究課題

  8

学術貢献活動

  26

社会貢献活動

  16

メディア報道

  41

その他

  2