講演・口頭発表等

2021年6月3日

ダブルルーメンチューブモデルを用いた気管支ファイバーの最適な潤滑剤の検討

日本麻酔科学会第68回学術集会
  • 山本, 純偉
  • ,
  • 佐々木, 桃子
  • ,
  • 丸尾, 和司

開催年月日
2021年6月3日 - 2021年7月9日
記述言語
日本語
会議種別
口頭発表(一般)
主催者
公益財団法人 日本麻酔科学会
開催地
Web

【背景】ダブルルーメンチューブ(DLT)使用時の円滑な気管
支ファイバーの操作に潤滑剤は必須であるが、メーカー推奨
の生理食塩水や水溶性ゼリーでは十分な潤滑が得られない
ことがある。今回、DLTモデルを用いて、各種潤滑剤使用時の
張力を比較・検討した。
【方法】ポーテックス・ブルーライン気管支内チューブ左
用37Fr®と同じ内径・材質・長さのチューブを、DLTと同じ
角度に湾曲するよう作成したモデル内に留置し、温度38 ℃、
湿度95 %に設定した閉鎖式保育器内に水平に置いた。直径
3.1 mmの気管支ファイバーをフォースゲージに接続し、
チューブ先端から2 cm/秒で水平に牽引し、その最大張力を生
理食塩水、リドカインスプレー8%®(8%スプレー)、K-Yゼリー®、ワセリン、グリセリン、ボーンワックス(WAX) を
潤滑に用い、10回連続、さらに5分間放置後3回連続挿脱し、これを1連の測定とし各剤5回ずつ測定した。チューブ
は測定ごとに交換し、気管支鏡は十分に洗浄した。解析は線形混合効果モデルに基づき、各回における潤滑剤間の
差の推測および,各潤滑剤における傾向性の対比検定を行った。
【結果】測定値を図1に示す。生食は抵抗が高く連続測定ができなかった。ワセリンのみが全ての回において8%
スプレーとグリセリンより有意に抵抗が小さかった。傾向検定では8%スプレーは回数を経るごとに抵抗が増し、
K-Yゼリー®とワセリンは抵抗が低下したが、WAX とグリセリンは繰り返しによる変化はなかった。
【考察】添付文書にはワセリンなどの石油系の潤滑剤やアルコール入りスプレーは使用しないとある。8%スプ
レーはアルコールを含有しており、使用に適さない。生食や水溶性ゼリーの潤滑が悪くなるのはファイバー表面
から落ちるためと考える。今回、体温では溶けないワセリンとWAX は抵抗が低く優れていることが示されたが、
通常の洗浄では落ちないため洗浄方法が課題である。