MISC

2016年9月

保存的に軽快した鈍的甲状腺外傷による頸部血腫の1例

新潟医学会雑誌
  • 遠藤 麻巳子
  • ,
  • 大渓 彩香
  • ,
  • 諸 和樹
  • ,
  • 土田 純子
  • ,
  • 辰田 久美子
  • ,
  • 永橋 昌幸
  • ,
  • 五十嵐 麻由子
  • ,
  • 中島 真人
  • ,
  • 庭野 稔之
  • ,
  • 若井 俊文

130
9
開始ページ
543
終了ページ
549
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
新潟医学会

頸部鈍的外傷により甲状腺損傷および頸部血腫が出現するも、保存的に軽快した1例を経験したので報告する。症例は28歳、女性。直進中の普通乗用車の助手席に乗っていた際、右折してきた乗用車に衝突され、自家用車は横転し炎上寸前のところを救助され、救急車にて当院救急外来に搬送された。来院時、意識は清明であったが、事故直後のことは記憶になかった。血圧129/81mmHg、脈拍95/分と循環動態は安定していたが、前頸部の腫脹および皮下出血を認めた。右前胸部の軽度圧痛を認める以外は、ほかに明らかな異常所見は認めなかった。血液生化学所見では、白血球数の軽度増多と、トランスアミナーゼの軽度上昇を認めたが、明らかな貧血は認めなかった。TSH 0.42μIU/ml、FT3 11.7pg/ml、FT4 2.7ng/dlと甲状腺機能亢進を認めた。CT検査では、甲状腺右葉下極の腫大と前頸部から上縦隔に至る血腫を認め、気管損傷は認めなかったが気管は軽度左側に圧排されていた。呼吸苦・呼吸困難の所見は認めなかったが、血腫増大による気道狭窄が出現してくる危険もあったため、入院の上、保存的に経過観察を行った。翌日、血腫は縮小傾向となり、血液所見でも貧血の進行を認めず、CT検査では血腫は縮小しており、水分摂取・食事を開始した。入院後3日目の採血では、FT3 6.4pg/ml、FT4 2.8ng/dlと甲状腺機能亢進は改善し全身状態も良好であったため、入院後4日目に退院となった。退院2週間後の外来受診時、前頸部腫脹は消失しており、血液生化学検査では貧血を認めず、TSH 0.07μIU/ml、FT3 3.6pg/ml、FT4 1.4ng/dlと甲状腺機能もほぼ正常となっていた。鈍的外傷による頸部甲状腺損傷の報告は文献的にも少ないが、甲状腺血腫が増大せず、気道狭窄を伴わない状態であれば、まず保存的治療を試みることが勧められる。また、本症例のように、甲状腺外傷に伴い甲状腺機能亢進を認めた例も報告されており、全身管理にも注意が必要である。(著者抄録)

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/120006760410
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AN00182415
URL
http://id.ndl.go.jp/bib/027820141
URL
http://hdl.handle.net/10191/45622
ID情報
  • ISSN : 0029-0440
  • 医中誌Web ID : 2017099768
  • CiNii Articles ID : 120006760410
  • CiNii Books ID : AN00182415

エクスポート
BibTeX RIS