共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

特許制度と企業の収益性に関する研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)
  • 大西 宏一郎
  • ,
  • 西村 陽一郎
  • ,
  • 山内 勇

課題番号
18K01636
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

中小企業の特許取得のシグナリング効果によって、ベンチャーキャタルなどの外部の資金提供機関との情報の非対称性の解消機能がどの程度機能しているのかをソフトウェア分野を対象に実証的に分析した。ソフトウェアは90年代になってはじめて特許化が可能となった技術分野であり、その時点での特許のシグナリングの役割を分析することで、外生的なショックに焦点を当てた分析が可能となる。なお、中小企業では一般的に資金制約が大きく、ベンチャーキャピタルからの出資が必要とされる一方で、ベンチャーキャピタルから見ると、中小企業に関する情報が少なく、情報の非対称性の程度が大きい。したがって、特許取得は有用なシグナリングとして機能すると考えられる。分析では、内生性の問題を解決するために、弁理士事務所の立地件数を操作変数として用いた。分析結果では、特許取得はソフトウェア企業におけるベンチャーキャピタルからの出資を加速化させることが明らかとなった。また、比較のために用いたソフトウェア著作権の登録件数も同様にベンチャーキャピタルからの出資につながることがわかった。ただし、両方の権利を取得することは追加的な出資につながらないことを示す結果を得た。また、2000年以降、特に著作権登録のベンチャーキャピタル出資への効果が弱くなる傾向が見られた。以上の結果から、特許権はシグナリングとして、情報の非対称性を解消する手段として機能しているが、一方で、ソフトウェアの著作権も同様な効果があり、少なくとも2つの知的財産権が並立していることは、シグナリングの観点において、必ずしも有用でないことを示していると思われる。