MISC

2011年4月

日本語版Lower Extremity Functional Scaleの開発 パイロットテストによる暫定版の信頼性・妥当性の検討

理学療法学
  • 中丸 宏二
  • ,
  • 相澤 純也
  • ,
  • 小山 貴之
  • ,
  • 波戸根 行成
  • ,
  • 瓦田 恵三
  • ,
  • 新田 收

38
Suppl.2
開始ページ
PI1
終了ページ
260
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(公社)日本理学療法士協会

【目的】下肢疾患患者に対する理学療法の介入効果を測定するために、関節可動域、筋力、歩行スピードなどの客観的アウトカムが用いられることが多い。近年、このような医療関係者による客観的な評価に加えて、日常生活動作などを患者自身が評価する患者立脚型アウトカムを用いることが重要視されてきており、これを測定する尺度として自己記入式の質問票が重要な役割を担っている。下肢の筋骨格系疾患に使用される質問票は、部位や診断名により様々な種類が存在しており、外来理学療法などで多様な疾患に対応する場合には用意しなければならない質問票の数が非常に多くなり、作業が煩雑になってしまう。このような問題を解決するために、下肢の筋骨格系疾患に幅広く適応でき、実施や採点が簡便で治療方針の決定や研究にも使用できる質問票として海外で開発されたものがLower Extremity Functional Scale(以下LEFS)である。LEFSは下肢の問題が日常生活動作に及ぼす影響ついて20項目、各項目は0~4点、総得点は0~80点で評価し、点数が低いほど障害が大きいことを意味する。LEFSは、下肢の筋骨格系疾患を有する外来患者(診断名は問わない)、変形性股関節症、人工股・膝関節置換術後、anterior knee pain、急性足関節捻挫、足関節骨折などで高い信頼性・妥当性が示されている。本研究の目的は、LEFSを異文化適応のガイドラインに準拠して日本語に翻訳し、暫定的な日本語版LEFSを作成することと、パイロットテストによって作成した暫定的な日本語版LEFSの信頼性(内的整合性)と表面的妥当性を検証し、より詳細な計量心理学的評価の研究に使用可能か確認することである。<BR><BR>【方法】LEFSの開発者であるDr. Stratford(McMaster University, Canada)から日本語に翻訳する許可を得て、Beatonらが推奨している異文化適応のガイドラインに準拠して順翻訳、逆翻訳を行った。逆翻訳したLEFSを開発者に提出し、アドバイスを参考にして暫定版を作成した。暫定的な日本語版LEFSを下肢に症状を訴える外来患者30名(20歳以上、診断名は問わない)に回答してもらうパイロットテストを行い、信頼性を検討するために内的整合性を示すクロンバックα係数を算出した。また、回答後に質問票の内容についてのインタビューを行うことと、パイロットテストの結果について開発者の意見を聞くことによって表面的妥当性を検討した。<BR><BR>【説明と同意】研究内容について書面と口頭で説明し、同意を得て質問票に回答してもらった。本研究は、首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得て実施した。<BR><BR>【結果】パイロットテストの対象の平均年齢は64.9±14.2歳、平均回答時間は2分25秒±44秒であった。平均合計点数は52.9±2.8点(範囲:17~75点)で天井・床効果は認められなかった。クロンバックα係数は0.95で高い内的整合性が示された。回答後のインタビューで自分の症状と質問内容とが関連していると答えた人は27名(90%)で、パイロットテストの結果についての開発者のコメントは、"Sitting for 1 hour"という項目については日本文化を考慮する必要があるかもしれないが、それ以外は非常に良好であるとのことであった。これらのことから日本語版LEFSは十分な表面的妥当性を有していることが示された。<BR><BR>【考察】本研究で作成した日本語版LEFSは、十分な内的整合性と表面的妥当性を有していることから、再現性を含めた信頼性、構成概念妥当性、反応性などを検証するより詳細な計量心理学的評価の研究に使用可能であることが示唆された。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】英語圏において信頼性・妥当性・反応性が認められているLEFSを日本においても使用できるようになれば、特に外来理学療法などの様々な疾患に対応する場合に1つの質問票を用意するだけで下肢疾患全般に適応できることから、業務の効率化が図れるようになる。また、信頼性・妥当性が検証された質問票をアウトカムとして使用することで下肢疾患患者に対する理学療法介入の臨床試験の質が向上し、他国とのデータの共有が可能となることで国際的な多施設間共同研究に貢献できる。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005017096
ID情報
  • ISSN : 0289-3770
  • 医中誌Web ID : 2011201102
  • CiNii Articles ID : 130005017096
  • identifiers.cinii_nr_id : 1000080279778

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