2004年 - 2006年
衛星間ドプラーによる3次元軌道決定方法の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
本研究では、ドプラー計測に影響する誤差要因を見直し、これまで補正方法が確立していない電離層・中性大気の影響と位相雑音の影響の新しいモデルを構築し、ドプラー計測そのものの精度の画期的な向上を図る。そのために、まずドプラー観測の衛星搭載機の周波数安定度・位相雑音について、特に衛星の回転が与える位相変動への影響のモデル化を行った。つぎに、月周回衛星の軌道を3次元的に観測することが、月の重力場推定にとってどれだけ効果的であるかを示すために、ドプラー計測とVLBIを組み合わせた3次元軌道決定についてシミュレーションを行い、とくにドプラー計測にVLBIを組み合わせることによって、低次の重力場の精度が向上し、ドプラー観測では感度が低い、月の縁辺部の重力場の精度が向上することを明らかにした。さらに、それらを組み合わせることによって、ドップラ計測を用いた月惑星重力場を最も高精度に求める手法を獲得し、実際にどの程度重力場推定精度が向上するのかの研究を行い、1年間のミッションによって得られる月重力場モデルの推定精度に関して、VLBI観測を行った場合と行わなかった場合の比較を行った結果、VLBI観測を行うことで全ての次数において精度が向上し、一番恩恵を受けるのは2次の係数であり、2.6倍の精度向上が期待され、3次および13次から33次の係数についても2倍以上の精度向上が期待されることを示した。2次の係数は、核の大きさ、マントルの密度分布といった基本的な内部構造を制約する慣性能率と結びついているので。VLBI観測を組み合わせた3次元の観測によって、月の核の大きさまで議論できる可能性が高くなることを示した。
- ID情報
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- 課題番号 : 16540391
- 体系的課題番号 : JP16540391