2020年4月 - 2025年3月
汎熱帯海流散布植物の分布周縁における進化過程の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
本研究では、汎熱帯海流散布植物の分布周縁における地域固有種の進化過程を解明することを目的としている。日本列島の温帯海岸域や小笠原諸島には、汎熱帯海流散布植物から派生したと推測される地域固有種が複数存在する。これら複数の分類群に着目して、(1)地域固有種を生み出した集団動態、(2)種分化・集団分化のパターンをもたらす自然選択、(3)地域固有種を生み出した地史的背景を解明する。
1.試料収集:オオハマボウ、ナガミハマナタマメ、ハマオモト、グンバイヒルガオおよびそれら近縁種のDNAおよびRNA試料を日本国内で収集した。
2.オオハマボウと近縁種の系統解析:既存の試料と今回採集した試料を合わせて、葉緑体全ゲノムとゲノムワイド一塩基多型解析に基づく系統解析を実施した。各近縁種の系統関係に関して、解像度の高い系統樹を得ることができた。葉緑体全ゲノムと核の一塩基多型解析に基づく系統樹の間では、樹形に大きな食い違いが見られた。葉緑体全ゲノムに基づく系統解析では、日本列島の温帯海岸域に生育するハマボウと小笠原諸島に生育するモンテンボクは、オオハマボウから独立に種分化したという従来の仮説が支持されたが、核の一塩基多型解析に基づく系統解析では、ハマボウとモンテンボクは共通祖先から進化したという結果となった。系統不一致の原因として、過去の遺伝子流動の可能性をABBA/BABAテストにより検討したが、種間あるいは地域系統間の遺伝子流動は限定的であり、ハマボウとモンテンボクではその痕跡は見られなかった。以上より、オオハマボウ祖先集団の急速な分布拡大とそれに伴う葉緑体ゲノムの祖先多型の維持が、葉緑体と核の系統の不一致の原因であると推測した。本成果の一部を日本植物分類学会で発表した。
3.ナガミハマナタマメの集団ゲノミクス解析:集団ゲノミクス解析に先駆けて、葉緑体全ゲノム配列を決定し、出版した。
1.試料収集:オオハマボウ、ナガミハマナタマメ、ハマオモト、グンバイヒルガオおよびそれら近縁種のDNAおよびRNA試料を日本国内で収集した。
2.オオハマボウと近縁種の系統解析:既存の試料と今回採集した試料を合わせて、葉緑体全ゲノムとゲノムワイド一塩基多型解析に基づく系統解析を実施した。各近縁種の系統関係に関して、解像度の高い系統樹を得ることができた。葉緑体全ゲノムと核の一塩基多型解析に基づく系統樹の間では、樹形に大きな食い違いが見られた。葉緑体全ゲノムに基づく系統解析では、日本列島の温帯海岸域に生育するハマボウと小笠原諸島に生育するモンテンボクは、オオハマボウから独立に種分化したという従来の仮説が支持されたが、核の一塩基多型解析に基づく系統解析では、ハマボウとモンテンボクは共通祖先から進化したという結果となった。系統不一致の原因として、過去の遺伝子流動の可能性をABBA/BABAテストにより検討したが、種間あるいは地域系統間の遺伝子流動は限定的であり、ハマボウとモンテンボクではその痕跡は見られなかった。以上より、オオハマボウ祖先集団の急速な分布拡大とそれに伴う葉緑体ゲノムの祖先多型の維持が、葉緑体と核の系統の不一致の原因であると推測した。本成果の一部を日本植物分類学会で発表した。
3.ナガミハマナタマメの集団ゲノミクス解析:集団ゲノミクス解析に先駆けて、葉緑体全ゲノム配列を決定し、出版した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20H03310
- 体系的課題番号 : JP20H03310