2016年6月 - 2018年3月
グリア細胞による神経系発振ステート制御機構の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
神経細胞は、活動電位をもって情報をコード化するが、活動電位自体はどれも同じ形をしている。よって、波形そのものではなく、活動電位の発火のタイミング、頻度、間隔などが情報の主体であると考えられている。特に、神経細胞が周期的に発火し、さらに、多くの神経細胞がこの周期性に同期しながら発火する現象が注目を浴びている。このような神経活動の発振現象の意味を探るには、人為的に発振ステートを遷移させるという実験的操作が有効である。本研究者は、広範囲の神経活動の発振ステートを支配しているのは、グリア細胞であるという仮説を立てた。そこで、オプトジェネティクスを用いて、神経細胞やグリア細胞の活動を光操作し、発振を止めたり、発振周波数を変化させるなどに挑戦した。
本研究では、まず、神経細胞に光感受性分子ChR2を発現する遺伝子改変ラットを使い、海馬に連発光刺激を連日送ったところ、同じ光刺激に対して、より過剰な興奮を示すようになった。ところが、光刺激をさらに繰り返すと、今度は、次第に発作が生まれなくなり、神経発振を完全に局所に封じ込めることができるという結果が得られた。神経からグリアへの繰り返しの刺激によって、グリア細胞の性質に可塑的な変化が生じ、グリア細胞からアデノシンが定常的に放出されるようになり、それが神経発振を抑えていると考えられた。また、脳内アデノシンの定常量を計測するため、マイクロダイアリシス実験を行い、質量分析にかけたところ、確かに、アデノシン量の増大が確認された。また、神経細胞ではなく、グリア細胞そのものにChR2等の光感受性分子を発現させることで、グリア細胞活動を操作したところ、グリア光操作によって神経細胞の発火頻度が左右された。したがって、本研究では、グリア細胞が、神経系の発振をいかようにもコントロールできる強力な作用を有していることが示された。
本研究では、まず、神経細胞に光感受性分子ChR2を発現する遺伝子改変ラットを使い、海馬に連発光刺激を連日送ったところ、同じ光刺激に対して、より過剰な興奮を示すようになった。ところが、光刺激をさらに繰り返すと、今度は、次第に発作が生まれなくなり、神経発振を完全に局所に封じ込めることができるという結果が得られた。神経からグリアへの繰り返しの刺激によって、グリア細胞の性質に可塑的な変化が生じ、グリア細胞からアデノシンが定常的に放出されるようになり、それが神経発振を抑えていると考えられた。また、脳内アデノシンの定常量を計測するため、マイクロダイアリシス実験を行い、質量分析にかけたところ、確かに、アデノシン量の増大が確認された。また、神経細胞ではなく、グリア細胞そのものにChR2等の光感受性分子を発現させることで、グリア細胞活動を操作したところ、グリア光操作によって神経細胞の発火頻度が左右された。したがって、本研究では、グリア細胞が、神経系の発振をいかようにもコントロールできる強力な作用を有していることが示された。
- ID情報
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- 課題番号 : 16H01601
- 体系的課題番号 : JP16H01601