共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

18世紀西洋の美術解剖学史-美術解剖学とメディカルイラストレーションのつながり

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
19K13009
体系的課題番号
JP19K13009
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

2021年度は、日本メディカルイラストレーション学会に『人体プロポーションの歴史 -理想的人体と現実的人体の間』を投稿した。本論は美術解剖学教育で取り上げられる人体の比例に関するもので、古代エジプト時代から20世紀までの人体プロポーションについてまとめた。
18世紀の美術解剖学の歴史に関しては、やや調査が遅れているが、現在歴史論文を執筆中である。2019年に行なったイギリスとイタリアへの渡航調査や一次文献の閲覧など論文を執筆するための資料は概ね揃っており、執筆は問題なく完了できる見込みである。
中でもイギリスの医師ジョン・ブリスバンとウイリアム・ハンターが残した教材の中に「芸術家向けの解剖学は、正確な教材を使用すれば、解剖を体験する必要はない」と解説されていることがわかった。こうした解釈は、美術解剖学教育に十分な教材や教育環境が整ったことに起因すと考えられる。実際に18世紀に制作された一部の教科書や解剖模型は、現代でもリプリントまたはリプロダクション品として入手可能である。
メディカルイラストレーションの調査に関しては、当時の医学と美術がどのようなプロセスを経て教材が作られたについて具体的な参考例を知ることができた。外科医セギエとローマで就学中の彫刻家のジャン=アントワーヌ・ウードン、画家のヨハン・クリスチャン・フォン・マンリッヒの共同作業によって生まれた解剖模型である。外科医のセギエがマンリッヒに図を描かせ、そこに構造名を記載していった。これは監修作業である。さらにその図を借りたウードンは製作中の像をもとにして解剖模型を製作した。解剖模型はセギエが閲覧し、ウードンはセギエからアドバイスを受けた。これも監修作業である。この結果生まれた解剖模型は現在も教科書に掲載されているなど、長期間の使用に耐える作例になっている。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13009
ID情報
  • 課題番号 : 19K13009
  • 体系的課題番号 : JP19K13009