『縄文土器の儀礼利用と象徴操作』
縄文土器の儀礼利用と象徴操作 (未完成考古学叢書10)
中村 耕作
アム・プロモーション(2013/5)
3780円


縄文土器の持つ豊富な情報を、形式と儀礼という観点で整理し、その社会的・象徴的意義の考察を試みた。

第1部は、儀礼利用という観点で先行研究を整理した上で、縄文時代の様相を見渡し、土器の器種分化や、副葬・廃屋への供献などの儀礼利用が盛行する減少が時期的・地域的に限定されることを確認した。

第2部では、そこから3つの文化を選んで、カテゴリの成立、継承・変容、共有・対立という方法論のケーススタディとして分析した。前期の浅鉢の分析では「儀礼用の土器」「副葬用の土器」といったカテゴリ認識の成立を扱い、新規器種としての浅鉢類、それらを用いた儀礼行為、人口指標である住居という各要素の時期的・地域的な分布を分析し、社会的緊張を背景とした新たな儀礼行為・儀礼具の創出の過程を描き出した。ほかに、中期の釣手土器を素材にカテゴリ認識の継承と変容、後期の浅鉢や注口土器を例にカテゴリ認識の共有・対立を論じた。

第3部では時期を通じた共通性から、製作・使用・廃棄の各段階において、共通して異質な二者の対立と融合という志向を読み取り、「象徴操作」と名づけた。

博士学位論文に加除・補論を加え出版したもの。


【目次】

序章 本書の主題と構成

第1部 方法論
 第1章 土器のカテゴリ認識と儀礼行為をめぐる方法論
 第2章 縄文土器の形式と儀礼での利用
  第1節 縄文土器の形式分化
  第2節 葬送儀礼における縄文土器
  第3節 住居廃絶儀礼における縄文土器
  補論 各種儀礼における縄文土器

第2部 土器の儀礼利用に見るカテゴリ認識の形成・展開過程
 第3章 浅鉢の出現と儀礼行為-カテゴリの定着過程
 第4章 釣手土器の発生と展開カテゴリの継承と変容
  第1節 本章の目的と検討対象
  第2節 顔面把手と釣手土器
  第3節 釣手土器の成立とカテゴリ認識
  第4節 釣手土器の展開過程
  第5節 釣手土器にみるカテゴリ認識の継承と変容
  補論 住居廃絶儀礼に供されたパン状炭化物
 第5章 土器副葬と土器被覆葬カテゴリの共有と対立
  第1節 本章の目的と検討対象
  第2節 土器副葬の事例検討
  第3節 土器被覆葬の事例検討
  第4節 土器副葬と土器被覆葬
  補論 住居床面出土の注口土器にみるカテゴリ認識の共通性

第3部 縄文土器をめぐる象徴操作
 第6章 縄文土器にみる異質な二者の統合志向
 第7章 土器と石棒の対置

終章 縄文土器の儀礼利用と象徴操作
 第1節 縄文土器の儀礼利用と象徴操作の総合的検討
 補論 縄文土器の儀礼利用・象徴性の普遍性と歴史性
縄文人の石神
國學院大學学術資料館の大形石棒プロジェクトによるシンポジウムをもとにした、大形石棒についての研究論集。石棒についての初の単行本として、総論(谷口)、製作技術・流通論(大工原・鈴木)、使用痕跡論(長田・中島・鈴木)、出土状況論(山本・中村耕作)、地域的様相(阿部・中村豊)などを総合的に論じ、関連するコラム(中島啓治・川口・加藤)を付したもの。

中村は「大形石棒と縄文土器」と題し、土器と石棒がセットで出土している事例を検討した。その結果、両者は二項対比的に置かれた状況が復元できた。他に、土器同士、石棒同士、石棒と石皿などのセット関係も考慮した結果、「男/女」などの二つの力を融合・中和することで新たな力を得るための呪術的行為が志向された可能性を指摘した。さらに、出土状況のほか、製作時に男女の象徴を同一個体に作りこんだり、使用時に象徴的部位を打ち欠くないし追加することで、同様な効果を得るという方法もあったことを示し、博士論文のⅢ部で論じる象徴操作の基本的な概念を提示した。