共同研究・競争的資金等の研究課題

2015年4月 - 2021年3月

小胞体カルシウムチャネルのアロステリック制御異常による認知症の発症機序

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
15K06791
配分額
(総額)
5,200,000円
(直接経費)
4,000,000円
(間接経費)
1,200,000円

認知症のメカニズムは充分に理解されておらず、新たな分子メカニズムの探索が必要である。本研究は小胞体カルシウムチャネルのアロステリック制御異常と脳機能低下の関連について研究し、認知症メカニズムに関する新しい手掛かりを得ることを目的とする。小胞体の膜上に存在するアロステリックタンパク質であるIP3受容体はカルシウムチャネルとして働き、個体発生やシナプス可塑性を担い、脳の記憶や学習に関与することが明らかにされている。IP3受容体の遺伝子変異はヒト家族性脳疾患である脊髄小脳失調症やGillespie症候群の原因となり、認知症の主な原因である神経変性に関与し、IP3受容体の動作原理の解明はこれらの疾病の理解と治療薬の開発に役立つと考えられる。しかし、IP3受容体のIP3結合部位は、カルシウムイオン透過孔から90オングストロームも離れていることが最近明らかとなり、IP3が物理的にどのようにチャネルを開けるのか謎であった。
本研究課題により世界で初めて2217アミノ酸残基からなる巨大なIP3受容体細胞質ドメインのX線結晶構造解析に成功し原著論文及び総説に成果を発表し(PNAS, 2017)、これらの成果は日刊工業新聞と科学新聞そして化学工業日報に掲載された。また、この研究成果は二つの異なるGordon Research会議に認められ口頭とポスター発表を行った(GRC,2017; GRC,2018)。更にX線結晶構造解析で示唆された「リーフレット」部位の変異体を作成し機能解析を行った。結果、IP3が結合して生じる構造変化がチャネルに伝達される経路は、競争相手がNature誌にて主張したC末端では無く、リーフレット領域を介することを初めて証明した。これらの成果と最近の知見をまとめ総説論文を出版した(Annual Review of Physiology, 2020)。

ID情報
  • 課題番号 : 15K06791