2017年12月2日
蝶形牌飾の展開について -長城地帯の事例を中心に-
中国考古学
- 巻
- 号
- 十七号
- 開始ページ
- 139
- 終了ページ
- 160
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(学術雑誌)
本稿で蝶形牌飾と呼ぶ装飾品を素材として、草原地帯東半の集団間関係について考察した。蝶形牌飾についてはこれまで日・中・露・蒙の研究者により使用法や意匠の関係性について議論されてきたが、論者によって分類基準が異なっており、用語も統一されてこなかった。本論文では文化史研究上の意義のある蝶形牌飾という用語を用い、草原地帯各地で出土する資料を集成したうえで、中国長城地帯から出土する資料を中心に蝶形牌飾の分類と編年を行った。長城地帯からは様々な意匠の蝶形牌飾が出土するが、南シベリアの意匠の影響を受けたものと、長城地帯独自の意匠を持つ一群が同時に存在したことを指摘した。これらの異なる意匠を持つ蝶形牌飾は、一部では分布を重複させつつも、それぞれが頃なる分布の傾向を示す。このことは、長城地帯をはじめ草原地帯東半では、オビ川上流域や内蒙古中南部を中心に広い範囲で交流を維持し続ける帯飾製作者が存在する一方で、比較的限られた範囲で活動する製作者も存在する、帯飾製作者の複層的な活動の実態を反映している。