共同研究・競争的資金等の研究課題

2005年 - 2007年

日本語受動構文の構造的意味と推意に関する語用論的原理の記述的研究

文部科学省  科学研究費補助金(基盤研究(C))  基盤研究(C)

課題番号
17520254
体系的課題番号
JP17520254
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
2,850,000円
(直接経費)
2,700,000円
(間接経費)
150,000円
資金種別
競争的資金

本研究の目的は,日本語における受動構文の構造と機能を明らかにすることであり,迷惑性が構文の持つ推意の一種であるとする仮説は,種々の分析から論証することができた。まず,膠着語である日本語の構造と形態の特徴を明確にするために,述部複合における境界を二種類に分けることができることを示し,それぞれを弱境界と強境界と名づけた。また,述部構造による態の転換が格標示シフトを変えることに着目し,昇格と降格という概念を使って,受動構文や関連する構文を記述し,分類した。昇格と降格は,本研究で,新たに明確な定義づけがなされ,そのパターンによって直接受動文と間接受動文が区別されることになった。さらに,間接受動文は語用論的に視点者を必要とすることを確認した上で,視点者追加・視点者統合・視点者遷移の3つの構文操作が生じることを明らかにした。また,個々の構文が推意を持つことをいくつも例で実証した上で,それらの推意のなかには取り消し可能ではあるが取り消しにくい強い推意と,取り消しが容易な弱い推意があることを述べた。更に,迷惑性がなぜ推意として生じるかについて1つの仮説を提示し,そこに種々の文脈が関わることを示した。文脈の規定は,これまで帰納的になされてきたが,本研究では文脈を演繹的に規定することを主張し,その動的な語用論の枠組みで,文脈をどういう種類に分けるべきかについても,記憶の種別と関連づけて分類を提案している。本研究では,記憶を処理記憶・談話記憶・長期記憶(知識記憶)と分け,談話記憶と結びつけられる状況文脈と形式文脈,長期記憶と結びつけられる世界知識(知識文脈),推論によって動的に追加される二次的文脈を立てている。また,これらの文脈のうち,形式文脈と結びつく標識のほかに,世界知識での命題の質を標示する要素があり,モダリティと深く関わることを明らかにした。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/17520254.ja.html
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17520254
ID情報
  • 課題番号 : 17520254
  • 体系的課題番号 : JP17520254