論文

査読有り
2014年

サツマイモ低温糊化性でん粉の迅速判別法

育種学研究
  • 小林 晃
  • ,
  • 片山 健二
  • ,
  • 境 哲文
  • ,
  • 甲斐 由美
  • ,
  • 高畑 康浩
  • ,
  • 吉永 優

16
2
開始ページ
37
終了ページ
41
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.1270/jsbbr.16.37
出版者・発行元
日本育種学会

日本におけるサツマイモの生産量は86.4万トン(2010年)であり,その用途別消費のうち最も多いのが生食用(44.6%)で,次が焼酎用(23.0%),3位がでん粉用(17.4%)である。サツマイモでん粉はその糊化特性がバレイショでん粉とコーンスターチのほぼ中間で特筆すべき特徴がなく,糊化温度,粘度,白度の点などから食品としての品質面でバレイショでん粉に劣る。そのため,サツマイモでん粉の約7割は水飴,ブドウ糖,異性化糖などの糖化製品用に使われ,安価なコーンスターチと競合している。そこで,新たな用途の開発と生産コストの低減が重要な課題となっており,九州沖縄農業研究センターでは糖化原料用だけでなく,和菓子や練り製品などの食品原料にも用いることができ,その食品の高品質化を可能にするでん粉原料用品種の育成に取り組んできた。その結果,2010年に通常のサツマイモでん粉より20℃程度低い温度で糊化する低温糊化性でん粉を含むでん粉原料用品種「こなみずき」を育成した(片山ら2012)。この低温糊化性でん粉は,糊化したでん粉ゲルが離水・硬化などの老化現象を生じにくく,生のでん粉粒が消化酵素の分解を受けやすいなどの特徴を示すことから,サツマイモでん粉の付加価値を高め,食品向けのでん粉需要の拡大につながるものと期待されている。低温糊化性は他作物における類似のアミロペクチン変異体の生化学的研究(Craig et al. 1998, Umemoto et al. 2004)およびジャガイモやサツマイモでの遺伝子組換え手法を用いた研究(Edwards et al. 1999, Lloyd et al. 1999, Takahata et. al. 2010)により,可溶性でん粉合成酵素IIの欠損が原因で生じるものであり,低温糊化性でん粉を含む青果用品種「クイックスイート」(片山ら2003)とその後代系統および一般的な品種・系統を供試した遺伝解析の結果から,低温糊化性には単一の劣性遺伝子が関与している可能性が高いものと推察されている(片山ら2009),また,サツマイモは同質6倍体であるが,低温糊化性に関わる遺伝子が劣性ホモ型(aaaaaa)の時に低温糊化性が発現し,優性遺伝子数の増加に伴ってでん粉の糊化温度が高くなるという遺伝子の量的効果も認められている(片山ら2009)。そのため,交雑後代での低温糊化性個体の出現頻度は,両親がともに低温糊化性である劣性ホモ型同土の組み合わせであれば100%となるが,低温糊化性型と野生型との交雑では0~50%と低くなることから,低温糊化性のサツマイモ品種育成においては,より多くの交雑後代集団を選抜に供する必要がある。低温糊化性に関する形質選抜は,塊根より抽出したでん粉の糊化開始温度をラピッドビスコアナライザー(RVA)により分析した結果を用いて行っている。しかしながら,分析には多くの時間と労力を要するため簡易な選抜法の開発が求められている。でん粉粒は水の存在下で加熱すると徐々に膨潤を始め,透明度が増し糊化するという特徴を有する。これは粒中に浸透した水分子が高温で不安定になったでん粉分子の水素結合を破壊するためと考えられているが,アルカリ溶液,液体アンモニア,ロダン酸ナトリウム,ジメチルスルホキシドなどの水素結合を破壊する媒体中では,室温でもでん粉粒は糊化する(檜作1997)。また,イネにおいては,白米および米粉がアルカリの希薄溶液中で崩壊し,その崩壊程度には品種間差があり(Warth and Darabsett 1914, Little et al.1958, 江幡1968a, 1968b),米粉のアルカリ崩壊性と糊化温度の間には有意な相関があることが知られている(Juliano et al. 1964)。そこで,本研究では糊化開始温度が異なるサツマイモでん粉のアルカリ崩壊性を調べるとともに,アルカリ崩壊性を利用した低温糊化性でん粉の迅速判別法の開発を行った。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.1270/jsbbr.16.37
J-GLOBAL
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201402264348403558
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004438684
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11317194
ID情報
  • DOI : 10.1270/jsbbr.16.37
  • ISSN : 1344-7629
  • ISSN : 1348-1290
  • J-Global ID : 201402264348403558
  • CiNii Articles ID : 130004438684
  • CiNii Books ID : AA11317194
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000257782939

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