共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年2月

前近代イスラム史における施設経営の実態:マムルーク朝期カイロの修道施設に着目して

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
19J10335
配分額
(総額)
2,100,000円
(直接経費)
2,100,000円
(間接経費)
0円

マムルーク朝においてスーフィーの修行・生活の拠点であった修道施設が多数建設されたこと、およびスーフィズム(イスラム神秘主義)が「民衆」の間にも地歩を確立したことを踏まえ、本研究は修道施設を対象に、その経営実態を明らかにすることを目的とする。その背景には、権力者層を主な考察対象として進められてきたこれまでの研究への反省がある。つまり、本研究が意図するのは、修道施設を通じたヒト・モノ・カネの流れの検討によるカイロの日常生活、および「民衆」の経済生活への接近である。
初年度は、国立公文書館およびワクフ省に所蔵される未刊行史料を閲覧・分析するため、カイロを拠点に研究を進める予定であったが、エジプトの政治情勢の緊張に伴い、閲覧証が発行されない事態となった。これを受け、急遽研究の拠点を欧米とトルコに移し、新たに史料調査を実施することとなった。その結果、以下の二種類の史料を入手することができた。すなわち、(1)ワクフをめぐる問題をあつかった法学史料(スレイマニエ図書館所蔵)、(2)ワクフ関連文書(シカゴ大学所蔵)である。このうち(1)については、従来から法学史料のワクフ研究への応用が進んでいないことが指摘されていたため、その利用価値は高く、本研究でも利活用する予定である。他方(2)については、短期の滞在であったことから入手できた史料はごく一部にどまった。また、次年度以降の研究を見据えて、国立公文書館およびワクフ省へ再度、史料の閲覧申請を行った。
研究発表は二度実施した。5月にボン大学で開催された国際ワークショップでは、修道施設の建設用地の獲得手法とその利用形態を類型的に考察した。11月にニシャンタシュ大学で開催された国際ワークショップでは、すでに学術誌に掲載された医師の寄進をあつかった論稿に改訂をくわえ、修道施設を通じて医師が財産を築いていく過程を分析した。

ID情報
  • 課題番号 : 19J10335