2020年10月
抜歯後に大動脈解離が大幅に拡大したMarfan症候群の1例
有病者歯科医療
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- 巻
- 29
- 号
- 4
- 開始ページ
- 149
- 終了ページ
- 154
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (一社)日本有病者歯科医療学会
Marfan症候群(Marfan syndrome;以下MFS)の主たる症状は心臓血管病変である。今回、MFS患者の人工血管移植術前における周術期口腔機能管理として行った下顎埋伏智歯抜歯後、大動脈解離が進行した症例を経験したので報告する。症例は41歳女性である。数年前からMFSに由来する胸腹部大動脈解離腔が徐々に拡大しているため2ヵ月後に人工血管移植術が予定されていた。患者には右下智歯周囲炎の既往があった。周術期口腔機能管理目的に当科を初診し、全身麻酔下で下顎埋伏智歯抜歯を通法通りに行った。手術部位感染はなかったが、術後6日目、抜歯後疼痛に伴う血圧の上昇が観察された。患者は同時に強い心窩部痛と背部痛を訴えた。心臓血管外科と対診し画像上、新しい解離腔を認めた。すぐにICUで降圧療法と疼痛管理が行われた。急変後24日目、心窩部と背部の疼痛は改善し退院となった。その間、抜歯窩は順調に治癒した。退院2ヵ月後、予定していた人工血管移植術が行われ、予後は良好である。MFSでは周術期口腔機能管理の際にも致命的な合併症が生じる可能性があることから、事前に医科歯科連携を構築し、進行性の合併症も想定した診療体制で対応することが重要と思われた。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0918-8150
- eISSN : 1884-667X
- 医中誌Web ID : 2021260445