共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

民主化失敗以降のアラブ政治変動と穏健派イスラームの国際的思想構築

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
20K20070
体系的課題番号
JP20K20070
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

アラブの春以降の政治思想の展開について、以下の点に着目して研究を進めた。
(1) アメリカ在住のエジプト系知識人であるハーリド・アブルファドルの政治思想について研究を進めた。特に、彼の思想における聖典理解のアプローチ、国家とシャリーア観、アラブ世界の近代化批判を中心に検討し、これがいずれも現代の過激派・宗教的厳格派批判につながっていることを明らかにした。さらに彼の思想が、いわゆる1990年代以降に一部の穏健派イスラーム主義者の間で唱えられるようになった「イスラーム民主主義」論を批判し、そのオルタナティヴを提示するものであることを明らかにした。
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(2) 現代イスラーム政治思想における「勧善懲悪」の概念とジェンダー規範の関わりに関して研究発表を行った。特に、現代イスラーム世界で大きな影響力を持つサラフィー主義者(宗教的厳格派)が重視し、時に宗教警察のような形で市民生活への介入を行う際にも掲げられる「勧善懲悪」の理念と、一見世俗主義を掲げる近代国家であるエジプト政府による、ジェンダー規範への介入の比較を行った。
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(3)上記(1)(2)に関連して、宗教的厳格派が掲げるイスラーム法の施行、近代憲法とイスラーム法の急速な接合、「勧善懲悪」概念の援用による市民生活への介入モデルに比して、穏健派のイスラーム政治思想がどのようなモデルに基づいているかを考察した。その結果、内部で様々な思想的異同はあるものの、穏健派の政治思想では、市民国家論や市民権論への関心のほか、具体的な法規定より、生命や財産といったイスラーム法が保護しようとしている諸価値に焦点をあてた人権思想が広がっていることを指摘した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K20070
ID情報
  • 課題番号 : 20K20070
  • 体系的課題番号 : JP20K20070