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2019年

第32回日本国際保健医療学会自由集会「東南アジアにおける看護の質の担保を目指した取り組みと相互協力支援について考える」実施報告

国際保健医療
  • 橋本 麻由美
  • ,
  • 須藤 恭子
  • ,
  • 上村 一郎
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  • 松藤 三紀
  • ,
  • 佐藤 千春
  • ,
  • 前田 愛子
  • ,
  • 成瀬 和子

34
4
開始ページ
229
終了ページ
239
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11197/jaih.34.229
出版者・発行元
日本国際保健医療学会

<p>  東南アジア地域の看護の特徴のひとつに、ASEAN「看護サービス相互承認協定」がある。この協定は域内の看護師移動の促進など4つの目的をもち、プロフェッショナルナースとしての職能強化を意図している。</p><p>  日本はASEAN+3として加盟国に対する看護師等の育成支援を示している。筆者らは、東南アジア地域の看護の質に影響すると思われる3つの視点;Nurse migration、看護に関する制度整備、看護師院内教育に関する研究結果を広く共有し、東南アジアにおける看護の質の担保を目指した取り組みと相互協力支援について考えることを目的に第32回日本国際保健医療学会学術大会において自由集会を開催した。</p><p>  本稿では、看護の質に影響する視点として自由集会にて発表した「東南アジア諸国のNurse migrationによる看護の質への影響に関する研究」、「カンボジア・ラオス・ベトナムにおける看護の質担保制度の整備状況の進捗」、そして「日本の看護実習施設における院内教育体制の変遷及びラオスでのワークショップの報告」について提示する。</p><p>  ASEAN加盟国では、看護学修士課程ならびに博士課程の設置の他、全ての加盟国において大学における看護基礎教育の開始や短期間の看護師養成教育の廃止等、看護教育の高等化と看護に関する法規整備が進んだ。低中所得国のカンボジア・ラオス・ベトナムにおける看護教育は、テクニカルナースからプロフェッショナルナース養成への移行期にある。このため、看護の高等教育化を担う看護教員の能力強化が課題のひとつである。課題解決には、カンボジア・ラオス・ベトナムの隣国であるタイ王国の経験やASEAN大学連合による協力支援が期待される。現職看護師は、看護サービスの担い手のみならず臨床実習における教育的役割も大きく、現職看護師を対象とした院内教育の強化も望まれる。日本の国立病院機構がもつ現職看護師対象の統一された教育プログラム開発と普及は、ASEAN加盟国の看護師院内教育体制強化への有用な事例となるであろう。</p><p>  協定の目的のひとつであるASEAN域内の看護師の移動の活発化はまだ時間を必要とすることが予測される。一方、ASEAN域内には、経済状況に起因するNurse migrationのPull(受け入れ)-Push(送り出し)要因の存在が指摘されている。加えて、アジア地域の少子高齢化に伴う介護人材確保への課題もあることから、介護分野とのスキルミックスを考慮したASEAN域内外の高所得国へのNurse migrationも推察される。東南アジアの看護の質の担保には、日本や各国の知見をASEAN加盟各国の看護に関する教育と法規整備への還元のみならず、ASEAN域内外の国が互いに協力した専門職としての看護人材の広域的還流による能力強化を目指したしくみづくりも必要と考える。</p>

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11197/jaih.34.229
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007789082
ID情報
  • DOI : 10.11197/jaih.34.229
  • ISSN : 0917-6543
  • CiNii Articles ID : 130007789082

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