2019年4月 - 2024年3月
長江流域秦楚文化の研究:漢帝国成立の文化的背景
独立行政法人日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
去年度までは主に考古資料の分析をおこなってきたが、COVID-19の影響により、本年度も中国での現地調査ができず、国内においても他研究機関所蔵資料等の利用になお大きな制限があったこと、またその一方で簡牘史料の会読に参加する機会をいただけたことから、本年度は簡牘史料を中心とした研究に主軸を移した。
簡牘史料を用いた研究においては、里耶秦簡や岳麓書院所蔵簡にみえる「故塞」「故徼」「故塞徼外蛮夷」などの語に着目し、統一秦の征服地や蛮夷にたいする姿勢・諸規定について検討した。これらの語は、用例がまだあまり多くは得られていないこともあり、先行研究でも定義が確定しているとはいいがたいが、本研究ではまず「故塞」「故徼」について、伝世文献との整合性をはかることで、従来とは大きく異なる解釈を提示した。そして、それをふまえて「故塞徼外蛮夷」が統一秦の法制度上どのように定義される存在なのかを考察し、戦国秦から漢にかけての蛮夷にたいする処遇の変遷のなかに「故塞徼外蛮夷」を位置づけることを試みた。また、伝世文献によれば、秦末に起きた諸反乱は、ただ征服地から起きたのみならず、蛮夷も加わるものだったが、岳麓書院所蔵簡秦律令にみえる「故塞徼外蛮夷」にかんする諸規定にもとづけば、そうした征服地や匈奴・百越以外の蛮夷の脅威は、陳勝・呉広の乱を契機として突如顕在化したものではなかったと考えられることを指摘した。
考古資料を用いた研究においては、長江下流域および中国沿岸部における漢代以前の都市や墓にかんするデータベース作成を継続しておこなった。
簡牘史料を用いた研究においては、里耶秦簡や岳麓書院所蔵簡にみえる「故塞」「故徼」「故塞徼外蛮夷」などの語に着目し、統一秦の征服地や蛮夷にたいする姿勢・諸規定について検討した。これらの語は、用例がまだあまり多くは得られていないこともあり、先行研究でも定義が確定しているとはいいがたいが、本研究ではまず「故塞」「故徼」について、伝世文献との整合性をはかることで、従来とは大きく異なる解釈を提示した。そして、それをふまえて「故塞徼外蛮夷」が統一秦の法制度上どのように定義される存在なのかを考察し、戦国秦から漢にかけての蛮夷にたいする処遇の変遷のなかに「故塞徼外蛮夷」を位置づけることを試みた。また、伝世文献によれば、秦末に起きた諸反乱は、ただ征服地から起きたのみならず、蛮夷も加わるものだったが、岳麓書院所蔵簡秦律令にみえる「故塞徼外蛮夷」にかんする諸規定にもとづけば、そうした征服地や匈奴・百越以外の蛮夷の脅威は、陳勝・呉広の乱を契機として突如顕在化したものではなかったと考えられることを指摘した。
考古資料を用いた研究においては、長江下流域および中国沿岸部における漢代以前の都市や墓にかんするデータベース作成を継続しておこなった。
- ID情報
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- 課題番号 : 19K01025
- 体系的課題番号 : JP19K01025
この研究課題の成果一覧
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論文
5-
宮宅潔編『嶽麓書院所藏簡《秦律令(壹)》譯注』 419-433 2023年3月 査読有り
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楚文化与長江中游早期開発国際学術検討会論文集 2021年2月
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中国越学 11 2020年6月
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アジア史学論集 = Studies in Asian history 11 19-34 2019年9月 招待有り
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中国出土史料研究 (23) 1-23 2019年7月 査読有り