本研究は，くも膜下出血患者のスパズム期における体験を<br />
明らかにすることを目的とした．神経学的重症度が<br />
grade Ⅰ - Ⅱの破裂性脳動脈瘤術後の患者５名に対し，<br />
半構成的インタビューを行った．<br />
得られたデータは現象学的アプローチを参考に分析した．<br />
その結果，対象者のスパズム期の体験は<br />
何が起きたか【わからない】ことから始まり，<br />
脳血管攣縮によりいつ麻痺症状が起こるか【わからない】中，<br />
破裂部位と痛みの不一致感によって<br />
自分の身体ですら【わからない】状況となっていた．<br />
また，脳血管攣縮などを予防するための治療上の制限や<br />
「殺してくれ」という程の壮絶な痛みで【動けない】状況であった．<br />
さらに，考える力が停止し【考えられない】様子や<br />
【考えられない】自分の状態について考えるという<br />
俯瞰している様子を語っていた．<br />
一方で，自然に回復するのを待つだけでなく，<br />
【努力して徐々につかんだ回復の感覚】を得ていた<br />
ことが明らかとなった．