2016年3月27日
シュウ酸アルミニウムの抗菌作用を利用したマツタケの生長戦略
日本森林学会大会学術講演集
- 巻
- 127th
- 号
- 開始ページ
- 228
- 終了ページ
- 165
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.11519/jfsc.127.0_165
- 出版者・発行元
- 日本森林学会
マツタケ(Tricholoma matsutake)の子実体は環状に発生する。環状部分から内側はシロと呼ばれ、シロ先端の活性菌根帯は抗菌活性を示すことが知られている。その抗菌物質はモノテルペンと推定されていたが、追試の結果、それらは活性物質本体ではないことが明らかとなった。シロに含まれる真の抗菌物質を追求した結果、その物質をシュウ酸アルミニウム錯体と同定した。同錯体はシロの中でも活性菌根帯にのみ検出され、その内側と外側では検出されなかった。この分布は抗菌活性およびマツタケ菌糸体量、シュウ酸濃度、可溶性リン酸濃度の分布と正の相関を、逆に微生物密度と負の相関を示した。この結果から、アカマツとマツタケは菌根からシュウ酸を分泌して不溶性リン酸アルミニウムから可溶性リン酸を得るとともに、シュウ酸アルミニウムの抗菌作用により土壌中の微生物環境を整えることで積極的にシロを拡大していると考えられる。シュウ酸アルミニウムはマツタケ菌糸の成長促進効果を示したことから、同錯体はシロの発達と維持に重要な役割を果たしている可能性が高い。
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.11519/jfsc.127.0_165
- ISSN : 2187-6576
- J-Global ID : 201602236647305032
- CiNii Articles ID : 130005166515