共同研究・競争的資金等の研究課題

2003年 - 2005年

小型ラマンライダーを併用した可搬型下部対流圏水蒸気プロファイラの開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
15340156
体系的課題番号
JP15340156
配分額
(総額)
17,100,000円
(直接経費)
17,100,000円

本研究課題では、Lバンドレーダーの観測下限高度である高度200m付近の観測に特化した小型可搬のライダーシステムを開発した。Nd:YAGレーザーの2倍高調波(532nm)を送信し、同波長と窒素ラマン散乱(607nm)、水蒸気ラマン(660nm)の3波長を口径35.5cmの望遠鏡で受信するシステムを製作した。その結果、高度200m付近は昼夜にかかわらず水蒸気混合比を24時間連続に観測できるシステムを得ることができた。システムは、室内に設置して斜めに配置することで窓から外気を観測する形態とし、京都大学信楽MU観測所の観測棟に設置して長期観測を行った。その結果、室内の温度変動に基く光軸のずれなどを改良し、ラジオゾンデとの同時観測を行って感度の変動等を調査した結果、半年以上の期間について安定に動作し、水蒸気偏差として4-5%以内に収まるという結果が得られた。高度200mではまれに発生する低高度の雲や霧以外の時間にはほぼ連続して水蒸気混合比が観測できた。また、夜間に絞りを開けた高高度までの観測では、高度3-4kmまでの水蒸気プロファイルが良好に得られた。その後、同ライダーを遠隔ネットワーク制御可能に改良しつつ、水平方向に向けた観測および車載の移動観測を行った。信楽での国有林上空の水平観測では、水蒸気の時間、空間変動が10%程度あることやエアロゾルの変動と相関が強いことを発見した。また阿蘇山の中岳での火山噴気の水平観測では、これまでの受動的な光学観測では不可能であった、火山から放出される水蒸気の量をはじめて直接的に観測することに成功した。以上のように、本研究課題は当初の予想を大きく上回って新しい応用観測を切り開く成果を挙げることができた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15340156
ID情報
  • 課題番号 : 15340156
  • 体系的課題番号 : JP15340156