MISC

2014年

フィサリンの全合成研究:DEFGH環かご型分子ライブラリーの構築を志向した合成戦略

天然有機化合物討論会講演要旨集
  • 森田 昌樹
  • ,
  • 小嶋 俊太郎
  • ,
  • 平井 剛
  • ,
  • 袖岡 幹子

56
開始ページ
Oral4
終了ページ
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.24496/tennenyuki.56.0_Oral4
出版者・発行元
天然有機化合物討論会実行委員会

<p>背景・目的</p><p>ステロイド誘導体であるフィサリン類には、興味深い生物活性が種々報告されている1)。当研究室では、複雑に縮環したかご型DEFGH環部の生物機能を明らかにするため、まず前駆体2からドミノ型環変換反応を含む15工程でDEFGH環部の合成を達成した2–4)。さらにBn-DEFGH(3)が中程度のNF-κB転写活性化阻害能を示すこと、physalin B(1)と3が同様の作用機序を有することを見出した5)。この結果は、疎水基を有するかご型分子4は、非ステロイド型NF-κB阻害剤のリード化合物となることを示している。我々は、より高活性化合物の創製を目指し、"1の全合成過程で"多様な疎水基を持つ4を合成できる戦略を確立しようと考えた。今回は、1の構造を模倣しつつ、ステロイド構造を避けるよう、疎水基としてAB環部、C環部、BC環部を有する5、6、7を1と共に合成できる方法論の確立を目指した(Figure 1)。</p><p>Figure 1. フィサリンの特徴的なDEFGH環部かご型構造</p><p>研究戦略</p><p>DEFGH環かご型構造は、特に塩基性条件下、不安定であったことから、その前駆体2に対して必要な疎水部位を導入した9からドミノ型環変換反応で、設計した5~7及び1(まとめて8として記載)を合成することを考えた(Scheme 1A)。</p><p>これらを合成するには、14位にB環部もしくはC環部構築の足がかりとなる8位炭素原子を連結する必要があった(Scheme 1B)。そこで、隣接する26位水酸基にジアゾアセチル基を導入し、14位橋頭位C–H結合をダイレクトにC–C結合に変換する分子内C–H挿入反応を計画した。生成物10の14位に導入された2炭素ユニットを足掛かりにジエン11へと導き、A環部エノン12との分子間Diels-Alder反応によって、C環部欠損型13(設計分子5の前駆体)を合成できると考えた。一方、AB環欠損型16、A環欠損型17、さらに1の合成に必要なC環部構築法として、8–9位に二重結合が残る、ジエン15の閉環メタセシス反応(RCM)を計画した。15を得るには、4置換炭素が隣接する立体的に混みいった13位ケトン体14に対し、4炭素ユニットを求核付加する必要がある。これらの手法を確立できれば、16(設計分子6の前駆体)を合成でき、さらに分子間Diels-Alder反応によって、17(設計分子7の前駆体)および天然物の前駆体18の合成も可能と期待した。幾つかの前例の少ない工程を含み、工程数も要する計画ではあるが、生物活性分子創製を目指した全合成研究手法の1つとして、価値ある研究戦略と考えて合成研究に取り組んだ。</p><p>Scheme 1. A)2から8への変換の概要、B)設計分子5~7および1の合成計画</p><p> </p><p>位置選択的分子内C–H挿入反応によるC8–C14位結合構築法の確立</p><p>まず、前駆体2から調製したジアゾアセテート19のC–H挿入反応を検討した。隣接する複数のC–H結合の存在下、14位選択的なC–H挿入反応を達成する必要があった。通常分子内C–H挿入反応ではγ-ラクトン体を優先的に与えるが、19aをMS4A存在下、CH2Cl2中、室温で触媒量のRh2(OPiv)4と処理すると、27位C–H結合へ挿入したδ-ラクトン21aを92%で与えた。このことから、本系では14位</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.24496/tennenyuki.56.0_Oral4
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007399491
ID情報
  • DOI : 10.24496/tennenyuki.56.0_Oral4
  • CiNii Articles ID : 130007399491

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