共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

北極モスツンドラ湿原の凍土融解・流出過程における有機炭素の分子種別変動機構の解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
20H04307
体系的課題番号
JP20H04307
配分額
(総額)
17,680,000円
(直接経費)
13,600,000円
(間接経費)
4,080,000円

本研究は、高緯度北極地域に分布する高密度炭素生態系であるモスー ツンドラ湿原に蓄蔵されている炭素の凍土融解や海洋への流出過程における量的・質的変動を解析する研究である。研究対象地はノルウェー・スバールバル諸島・ニーオルスン・ステュファレット湿原であるが、COVID-19の影響により現地での想定深度の永久凍土採取が実施できなかったため、代表者の研究室に保有していた試料を用いて、凍結融解サイクル実験を実施した。
活動層(0-20 cm:上部、中部、下部)と凍土表層(20-56 cmの3 cmごと)の融解水試料について、TOC計、3D-EEM、SPR-W5-WATERGATEパルス-1H NMRなどの分析に供した。各種光学的指標データや3D-EEM解析の結果からは活動層中部の溶存有機炭素(DOC)特性は同上部とは大きく異なるが、同下部や凍土表層では類似した特性を示した。また、1H NMR分析の結果からは活動層中部は同上部と類似していたが、下部および凍土表層とは大きく異なる特性が示された。これは3D-EEMなどの汎用法だけでDOCを評価することの問題を示唆している。また、活動層下部から凍土表層にかけてのDOC特性の大きな違いは認められないことが明らかになった。
次いで、融解後の凍土を再凍結する操作を繰り返す、凍結融解サイクル実験を行った。その結果、活動層上部は他層に比べてサイクル操作による量的・質的な影響を受けすい脆弱なDOC特性を持つことが明らかになった。それ以外の層のDOCは難溶解性成分割合の高いことが示された。これらの結果を踏まえ、温暖化現象による凍土層融解の促進に伴って溶出する可能性のあるDOC特性を考慮した上で、北極湿原における炭素フローを解析する必要性が求められ、調査対象地における定量的データや、より深い凍土層試料を用いた解析情報の補填の必要性が認められた。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20H04307
ID情報
  • 課題番号 : 20H04307
  • 体系的課題番号 : JP20H04307