論文

2020年10月

高度な顎堤吸収を伴う上下無菌顎患者の機能回復を図った一例 ピエゾグラフィ・交叉咬合排列の適用

日本総合歯科学会雑誌
  • 金岡 沙季
  • ,
  • 伊藤 晴江
  • ,
  • 塩見 晶
  • ,
  • 石崎 裕子
  • ,
  • 奥村 暢旦
  • ,
  • 長谷川 真奈
  • ,
  • 藤井 規孝

12
開始ページ
51
終了ページ
56
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
日本総合歯科学会

患者は81歳の男性。下の入れ歯が食事の時に浮き上がり,食べ物が食べづらいとの主訴であった。口腔内は上下無歯顎であり,上顎前歯部にはフラビーガムを認め,下顎顎堤は垂直的に高度に吸収し,上顎顎堤より頬側に位置していた。義歯の不適合による咀嚼障害と診断し,上下全部床義歯の製作を行った。個人トレーを用いて選択的な加圧印象を採得し,ピエゾグラフィによって下顎臼歯部の排列位置や床研磨面形態を決定した。その後,交叉咬合排列で作製した蝋義歯を用いて咬合圧印象を行い,義歯を完成させた。完成した新義歯は維持安定が改善され,患者は問題なく使用できている。旧義歯および口腔内における問題点を把握し,新義歯製作においてそれらの改善を図るにあたりピエゾグラフィ法を用いたところ,義歯の維持安定が得られ患者の満足度を向上させることができた。本症例のように著しい顎堤吸収がみられる症例に対しては義歯床粘膜面の適合性はもちろん,口腔周囲筋に調和する義歯の形態や上下顎顎堤関係に配慮した人工歯の排列が義歯の安定に大きく影響すると考えられた。(著者抄録)

ID情報
  • eISSN : 2189-938X
  • 医中誌Web ID : UC09250007

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