共同研究・競争的資金等の研究課題

2014年4月 - 2017年10月

関係性の病理学--修復的正義とケアの視点を経て

日本学術振興会  特別研究員奨励費PD  特別研究員奨励費

課題番号
14J00333
体系的課題番号
JP14J00333
配分額
(総額)
4,550,000円
(直接経費)
3,500,000円
(間接経費)
1,050,000円

(1)共依存研究の集大成として、第一に、単著『共依存の倫理――必要とされることを渇望する人びと』晃洋書房を出版した。第二に、これまでの共依存研究の成果をもとに、共依存者の人生の幸・不幸を他者が評価することの危険性について検討、および、共依存者の「異なる声」がいかなる言説の元に聞き逃されてきたか、そして、どのような政策が現在求められているのかについて検討した(研究成果は、南山大学社会倫理研究所2017年度第1回懇話会、2017年度第2回依存問題基礎講座、東京大学上廣死生学・応用倫理講座:臨床死生学・倫理学研究会にて発表した)。
(2)報告者は、このようなケアの倫理を再検討することで、これまでのケアの倫理に否定されてきた極度な依存状態にある人びとを受容するための倫理理論の構築を目指している。その導入的な議論として、ケアの倫理の創始者であるキャロル・ギリガンの道徳的発達理論を検討することで、これまで「未熟」と位置付けられてきた慣習的レベルの自己を再評価し、現実における「真実」を見極めるのではなく、他者をケアするという「善」を追求し続けるあり方を肯定的に論じた(研究成果は、2017年度日本倫理学会にて発表した)。
(3)報告者は、NPO法人ワンデーポートにて定期的なフィールドワークを行っている。施設でのミーティング、イベントの参加、団体が主催する勉強会への参加を通じて、関係者との信頼関係の構築を行っている。ワンデーポートは依存症者とその家族を引き離す従来型の自助グループのあり方や、依存症回復理論に異議を唱え、個別主義的な理念の元に相談者や入所者一人一人の個別的背景を重視した支援を試みている。このように伝統的な理論を批判的なまなざしで見ている依存症関連団体は稀有な存在であり、この調査とその成果の公表は、意義深い。このフィールドワークは、今後の研究に大いに生かされるものであると考えている。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-14J00333
ID情報
  • 課題番号 : 14J00333
  • 体系的課題番号 : JP14J00333