2019年6月 - 2021年3月
金属腐食反応ダイナミクスのナノスケール・リアルタイム蛍光イメージング
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
本研究では、金属腐食反応のダイナミクスをナノメートルスケールの空間分解能でリアルタイムにイメージングする新手法の創出に挑戦する。本年度は、イメージングのための金属腐食プローブの開発へ向けた物質設計指針を得ることを目指して、化学種に応答する光スイッチ型蛍光分子の合成と機能評価を行った。
化学種と結合する部位としてジメチルアミノ基を有する蛍光性フォトクロミック分子を合成した。この分子の溶液に対して光を照射すると異性化反応が起こり、それに伴い蛍光強度が変化したことから、光による蛍光スイッチ機能が観測された。しかし、高極性溶媒中においては、この分子の光異性化反応性および蛍光スイッチ機能が著しく低下した。これは、高極性溶媒中においては、電子供与性のジメチルアミノ基と電子受容性の分子中央部位との間の電荷移動相互作用により光異性化反応性が抑制されるためと考えられる。この高極性溶液に対してトリフルオロ酢酸を添加すると、光異性化反応と蛍光スイッチ機能が活性化された。これは、トリフルオロ酢酸から発生する水素イオンがジメチルアミノ基に結合することで、電荷移動が起こらなくなったためと考えられる。すなわち、電荷移動と光異性化反応の競合と、その水素イオンの結合による変化を利用することで、水素イオンの結合により光スイッチ機能が活性化される新しい蛍光分子を合成できることが示唆された。このような蛍光分子は、金属腐食過程における水素イオン濃度を可視化するプローブとして機能する可能性を秘めている。
化学種と結合する部位としてジメチルアミノ基を有する蛍光性フォトクロミック分子を合成した。この分子の溶液に対して光を照射すると異性化反応が起こり、それに伴い蛍光強度が変化したことから、光による蛍光スイッチ機能が観測された。しかし、高極性溶媒中においては、この分子の光異性化反応性および蛍光スイッチ機能が著しく低下した。これは、高極性溶媒中においては、電子供与性のジメチルアミノ基と電子受容性の分子中央部位との間の電荷移動相互作用により光異性化反応性が抑制されるためと考えられる。この高極性溶液に対してトリフルオロ酢酸を添加すると、光異性化反応と蛍光スイッチ機能が活性化された。これは、トリフルオロ酢酸から発生する水素イオンがジメチルアミノ基に結合することで、電荷移動が起こらなくなったためと考えられる。すなわち、電荷移動と光異性化反応の競合と、その水素イオンの結合による変化を利用することで、水素イオンの結合により光スイッチ機能が活性化される新しい蛍光分子を合成できることが示唆された。このような蛍光分子は、金属腐食過程における水素イオン濃度を可視化するプローブとして機能する可能性を秘めている。
- ID情報
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- 課題番号 : 19K22118