共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

量子多体系におけるスクランブリングとカオス的ダイナミクス

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K03787
体系的課題番号
JP20K03787
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

本研究は、量子多体系、とくに共形対称性をもち重力系と対応しうるもののスクランブリングやカオス的ダイナミクスについて複数の具体的な問題設定で調べ、物性実験での実現方法を提案しようとするものである。第2年度の実績は主に以下のものである:
(1) サチデフ-イェ-キタエフ(SYK)模型はN個のフェルミオンがランダムなq点の全対全相互作用をする模型である。一般にqが4以上ではNが大きい極限で解けて、低温で共形対称性が現れ「カオスの上限」を満たすカオス系である。一方、q=2では一体問題として解けてカオス性はない。q=4の模型にq=2の摂動項を加えていくと、多体の固有関数の、フォック空間での局在が起きる。国際共同研究により、このとき、系を2つに分けたときのエンタングルメント・エントロピーが、q=2の項の強さの関数として、非自明なプラトーをもつことを予測し、数値的に確認した。これは、局在が起きるよりも弱い摂動では、固有状態がほぼ似通ったエネルギーの状態の間に偏らず広がっていることを示すものである。
(2) 対称性の概念を、群で記述される可逆なものから、Haagerup 融合圏と呼ばれる構造で記述される非可逆なものに一般化したものに従うエニオン鎖について、国際共同研究により、基底状態のエネルギーやエンタングルメント・エントロピー、励起スペクトルを数値的に調べた。セントラルチャージc=2の1+1次元共形場理論で記述される臨界点にある証拠が得られた。
(3) SYK模型は O(N^q) 個のランダムな結合定数をもつが、q≧4のとき、このうちランダムに選んだ O(N) 個以外を0としてもカオス系であることが指摘されていた。ここで O(N)個全ての絶対値を1としても固有エネルギーのスペクトルがランダム行列的となることを見出し、そのような模型による時間発展が量子誤り訂正を形成することを定量的に確認した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K03787
ID情報
  • 課題番号 : 20K03787
  • 体系的課題番号 : JP20K03787

この研究課題の成果一覧

論文

  7

講演・口頭発表等

  2