MISC

2008年

「味覚教育」を取り入れた調理技能習得の授業づくり

日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
  • 佐藤 雅子
  • ,
  • 石井 克枝

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開始ページ
30
終了ページ
30
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11549/jhee.51.0.30.0
出版者・発行元
日本家庭科教育学会

【目的】<BR> 近年,食に関する様々な問題が生じており,学習指導要領改訂でも食教育の重要性が指摘されている。「味覚教育」について注目され,先行研究1)より,味覚と食意識の向上,食行動の関係が示されている。そこで本研究では「味覚教育」を小学校の家庭科学習に位置づけることにより視点を明確にした調理技能習得の授業づくりを目的とした。<BR>【方法】<BR> 千葉県公立小学校6年生の児童63名を対象に,2007年6月から11月にかけて,家庭科授業と「総合的な学習の時間(以下,『総合』と記入)」において実施した。その内容は, 家庭科の題材「朝食にあうおかずを作ろう」7時間,「楽しい食事をくふうしよう」11時間,『総合』の題材「地域の文化を知ろう」9時間(17時間のうち)の計27時間である。事前と事後で「1.『おいしさ』,調理に関する意識調査」「2.家庭における調理の実践の程度」「3.ウエビングマップによる語彙の変化」について質問紙にて調査し,それらを分析の資料とした。<BR>【結果】<BR>1.「味覚教育」を取り入れる意義<BR> 「味わう」ことを意識させるために,糖分が同じヨーグルトに色,香りを添加した3種の味を比較する活動を初回の授業に位置づけた。児童は糖分が同じヨーグルトを「イチゴの香料と赤色をつけたものが一番甘い」と感じた。視覚と嗅覚が味に変化を及ぼすことに驚き,味わうときには五感を活用していることに気付き,おいしさを意識するようになった。<BR>2.「味覚体験」を活用した調理学習<BR> 五感の活用を「ゆでる・いためる」調理学習に位置づけた。すなわち,調理の前に加熱の仕方をかえた食材を食べ比べ,五感を活用して「硬さ」に着目させることで,好みの硬さに調理するのに加熱時間という目的を持った調理学習とした。児童は,五感を活用することで,調理による食材の変化に気付き,温度や時間を意識した調理を行った。また,この学習では調理操作を一人ひとりが行うことで,個人が視点を意識し,技能習得に効果的であった。<BR>3.1食分の献立作成と調理 <BR> 五感の活用を「1食分の献立作成」の学習にも位置づけた。児童は「献立には栄養バランス以外にも味や色,温度等の組み合わせがある」ことに気付いて個々に献立を作成した。ここでは,地域の方や栄養士の協力を得て,地域食材の「味」を組み合わせた献立作成とした。そして,個人で作成した献立を班で紹介しあい,グループでの調理実習用に作成し直した。調理は1学期に学習した「ゆでる」「いためる」調理の応用として,一人1品を担当とし,グループで1食分の献立となるようにした。このことにより,「1.責任をもった調理を行うことによる技能の向上」「2.作り手が食べる側の評価を気にすることに気付く」「3.一緒に食べる楽しさを実感する」等,調理にかかわる技能と食意識の向上に効果的であることが明らかとなった。<BR>4.『総合』とのリンク<BR> 地域食材であるどらまめ(黒大豆)を教材として取り入れ,栽培して献立作成や調理に活用した。栽培でも五感の活用を促すことで,実感を伴った多様な表現活動がみられた。また児童作成の献立が地域のイベントの弁当に採用され,地域に発信する活動を行った。児童が弁当販売を行い,生産者,調理する人,消費者等多くの人の心情にふれ,人との交流を楽しむ児童や地域と自分の関わりに存在に気付いた児童も増加した。<BR>5.まとめ<BR> 「味覚教育」を取り入れ五感を意識させたことで,児童は調理による食材の変化を捉え,調理の視点を明確に持つことができた。そして視点を意識した調理を行うことが,調理技能習得に効果的であることがわかった。また,五感を活用することで,語彙を増やして表現力が豊かになり,他人の心情を共感しあえる効果もあることが明らかとなった。<BR>1)鈴木智子,得丸定子「中学生の味覚と食意識・食行動の関係性」日本家庭科教育学会誌第50巻第2号

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11549/jhee.51.0.30.0
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006962856
ID情報
  • DOI : 10.11549/jhee.51.0.30.0
  • CiNii Articles ID : 130006962856

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