共同研究・競争的資金等の研究課題

2009年 - 2009年

生化学的カスケードネットワークの解析による統合失調症研究

文部科学省  科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)  挑戦的萌芽研究

課題番号
21659279
体系的課題番号
JP21659279
資金種別
競争的資金

グリオキサラーゼ代謝と相互に関連する代謝ネットワーク分子群の生化学プロファイルから、主成分分析を行った結果、終末糖化産物(AGEs)の消去系として機能することが知られる分泌型AGE受容体(esRAGE)がカルボニルストレス性統合失調症の主成分因子として抽出された。統合失調症105名、健常者81名についてesRAGEを定量したところ、患者群の36名(34.3%)にesRAGE低下が認められた。一方、健常者群でのesRAGE低下は11名(13.6%)であった(P=0.001,OR=3.3,95%CI=1.6-7.0)。また、esRAGEの低下は、GLO1変異型の症例に比べて野生型の症例において顕著であった(P<0.05)。さらに、esRAGE低下を認めた症例での遺伝子変異を疑い、esRAGEをコードするAGERに関してresequenceを実施した結果、esRAGEの発現と関連するvariantを同定した。本研究によって、およそ15%の統合失調症にペントシジン蓄積・ビタミンB6低下・esRAGE低下を認め、その遺伝的要因として、GL01とAGER変異が関連することを明らかにした。esRAGEはスプライシングアイソフォームとして産生されるが、AGERのexon/intron junctionにあるvariantが有意なesRAGE低下と関連したことから、esRAGE低下に遺伝的要因が関与することが示唆された。また、esRAGE低下は、GL01変異症例に比べ、野生型症例でより顕著であったことから、GL01野生型のカルボニルストレス性統合失調症の要因の一部にesRAGEの低下がより関与していると考えられた。さらに、ペントシジン蓄積・ビタミンB6低下・esRAGE低下を伴う症例とペントシジン正常・ビタミンB6正常・esRAGE正常の症例とを比較すると、前者において、発症年齢の若年化、入院期間の長期化、抗精神病薬投与量の増加が認められた。このことは、ペントシジン、ビタミンB6に加え、esRAGEが予後予測など、バイオマーカーとしての臨床的有用性が示唆された。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/p/21659279
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21659279
ID情報
  • 課題番号 : 21659279
  • 体系的課題番号 : JP21659279