2016年12月
16p13.11微小重複症の候補遺伝子の探索
兵庫医科大学医学会雑誌
- 巻
- 41
- 号
- 1
- 開始ページ
- 37
- 終了ページ
- 46
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 兵庫医科大学医学会
16p13.11微小重複症は、最近になって発見された稀な疾患である。神経発達に関連した行動学的異常は、シナプス異常との関連があることは、よく確立されているが、微小重複した16p13.11コア領域にはシナプス関連タンパクが含まれない。にもかかわらず、そのコピー数の変異(CNV)は様々な神経発達症候(注意欠如多動症、知的能力障害群、全般的発達遅延、自閉スペクトラム症)のリスクとなる。これまで、その候補遺伝子や病態の分子メカニズムは全く分かっていなかった。我々は、胎児期の皮質神経新生の異常が16p13.11微小重複による神経発達症候の共通した中間表現型であるという考えのもと、候補遺伝子を探索した。まず、我々は、患者情報から、16p13.11CNVのコア領域(0.64Mb)を同定した。そして、発現解析などにより、その中の3つの遺伝子に着目した。その3つの候補遺伝子を含むヒトBAC-DNAをBAC-Tg法によりマウスのゲノムに挿入し、疾患モデル動物を作製した。行動学的解析により、メスで多動を示し、組織学的に皮質神経新生異常を示すことが分かった。また、miR-484とMarf1を候補分子として同定し、その両方が、神経前駆細胞からの神経新生を促進する働きがあることが分かった。またmiR-484は、プロトカドヘリン19(PCDH19)をターゲットすることを突き止めた。PCDH19はその遺伝子変異により、女性に限局したてんかん、知的能力障害を発症する。相加的にmiR-484/PCDH19シグナルとMarf1シグナルの異常による神経新生異常が想定されるが、今後は、ヒトの疾患特異的iPS細胞においてそれを確かめていきたい。(著者抄録)
- ID情報
-
- ISSN : 0385-7638
- 医中誌Web ID : 2017380802