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2015年10月

地域農業の将来動向と担い手経営の成立・展開に必要な技術開発方向

中央農業総合研究センター研究資料
  • 千田 雅之
  • 細山 隆夫
  • 堀川 彰
  • 宮路 広武
  • 安武 正史
  • 宮武 恭一
  • 松本 浩一
  • 房安 功太郎
  • 笹原 和哉
  • 渡部 博明
  • 坂本 英美
  • 岡崎 泰裕
  • 田口 善勝
  • 吉川 好文
  • 島 義史
  • 金岡 正樹
  • 梅本 雅
  • 関野 幸二
  • 磯島 昭代
  • 伊藤 和子
  • 迫田 登稔
  • 長谷川 啓哉
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10
開始ページ
1
終了ページ
211
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
農業技術研究機構中央農業総合研究センター

わが国の熱量ベースの食料自給率は先進国のなかでも低水準にある。表1は過去45年間の食料自給率等の推移を示したものである。米の消費量は一貫して減少傾向に推移し,それに併せて生産調整が行われ,米の国内生産量も減少している。麦類,豆類の消費量は2000年頃まで,飼料需要量は1990年頃まで増加傾向に推移している。これに対して国内生産量は粗飼料を除き,1965年の生産量を大きく下回っている。生産調整により米の作付面積は縮小し,他作物の作付機会が増えているにも関わらず,それらの生産量は増加していないのである。言い換えれば,米の消費減少,パンやめん類,畜産物の消費増加と言った食生活の変化に国内の生産側が対応できていないのである。その結果,食料自給率は1965年の73%から2000年の40%にまで低下している。近年では麦類や豆類の消費量,飼料需要量は減少に転じているにも関わらず,食料自給率は向上する兆しは見られない。米の消費・生産量はさらに減少し米の作付面積も減少しているにも関わらず,麦類の生産量がわずかに増加しているのみで,粗飼料の国内供給量はむしろ減少しているためである。一方,国内の食料生産力の基となる農地面積も減少している。1976年以降現在までに,干拓や開墾により約70万haの農地が拡張されているにも関わらず,農地面積は100万ha以上も減少している。道路や宅地等への転用もあるが,耕作放棄された農地が約86万haも生じ,現在の田畑の不作付地20万haと併せると,約106万haの遊休農地が存在する。なかには灌木が生え,もはや農地の機能を有していない土地もあり,食料自給率が低いにも関わらず,食料生産のストックとしての農地資源が年々縮小しているのである。加えて,食料生産力の重要な要素である農家数,農業労働力も著しく減少している。農家数は約550万戸から2010年には163万戸にまで減少している。なかでも,わが国農業の特徴であった兼業農家の減少がとくに著しい。多くの兼業農家により支えられてきたこれまでのわが国の食料生産構造が大きく変わろうとしているのである。また,仕事として主に農業に従事する「基幹的農業従事者」は,1965年の約9百万人から2010年の約2百万人に減少している。なかでも,60歳未満の基幹的農業従事者は一貫して減少し続け,2020年には約25万人にまで減少すると予測される。60歳以上の基幹的農業従事者は1990年前後から増加に転じていたが2000年から減少しはじめ,2020年には約百万人にまで減少すると予測される。2050年には92億人になると予想される世界人口の増加,人口大国のBRICSの経済成長と畜産物消費の増加,それに伴う穀物価格上昇のなかで,これまでのように海外から食料が安定的に供給される保証はない。何よりも国内に食料生産基盤の農地が豊富にありながら,使い切れていない状況は世界のなかでも例を見ない。このため,国内の農地資源を活用した食料自給力の向上は,わが国のみならず,国際的にも果たすべき責任と考えられる。このように農業労働力及び農業経営体が激減するなかで,国民への安定した食料供給を図るためには,農地資源の保全とともに労働生産性を高める農地の基盤整備や技術開発が不可欠となる。技術開発にあたっては,今後の農業労働力及び農業経営体の動向を的確に予測し,その予測のもとで担い手経営が管理すべき経営規模を推計し,その実現に必要な技術開発方向・技術開発課題を示すことが必要である。こうした背景のもとで,農研機構・開発技術評価プロジェクトでは,今後(2020年)の地域農業と経営資源の動向,担い手経営の特徴を予測し,食料生産力の向上を可能にする営農モデルの提示,営農モデル成立に必要な技術開発方向とその具体的課題の提示に取り組んでいる。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/220000150787
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11638813
URL
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010900810 本文へのリンクあり
ID情報
  • ISSN : 1347-1279
  • CiNii Articles ID : 220000150787
  • CiNii Books ID : AA11638813

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