心臓周囲脂肪 (EAT) は異所性脂肪の一種であるが、近年EAT量の増加が冠動脈硬化の重症度と関連があることが報告された。一方、EATの質的変化が冠動脈硬化に及ぼす影響については明らかにされておらず、本研究では心臓手術で採取されるEATを用いて脂肪組織の代謝能などを評価した。非動脈硬化性心疾患患者と比べて冠動脈疾患患者ではEATミトコンドリア呼吸能が低下しており、EAT由来のアディポネクチン産生量と正の相関を、冠動脈疾患の重症度と負の相関を示した。したがって、EATにおけるミトコンドリア機能障害が少なくとも一部はアディポネクチン産生能低下を介して、冠動脈硬化の進行に寄与する可能性が示唆された。