1996年 - 1998年
豪雨の形成過程のマルチスケール研究と予測法の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
3年計画の最終年次として、平成10年度は、これまでの観測結果なども含めて、豪雨形成の過程と予測可能性について総合的にまとめた。興味深い主な研究成果は下記の通りである:1.梅雨期における東アジアの雲量分布と列島上の降雨量には、1993年の異常多雨、1994年の異常少雨など、しばしば顕著な2年周期の変化が見いだされる。2.数100kmスケールの雲群の中でも、その西端に次々と積乱雲群が形成されることにより長時間維持され、停滞する雲群は高い降水効率を示し、雲群内に約5時間の間隔で形成、発達する積乱雲群が雲群全体の高い降水効率に寄与する。3.従来そのようなシステムが形成されにくいとされてきた大気環境でも、下層が湿潤な大気では、バンドに直交する方向へゆっくり移動し、しばしば豪雨をもたらすバンド状降雨システムが形成され、また下層の卓越風に相対的にある種の山系配列がある場合は、長時間維持、停滞するバンド状降雨システムが形成され、遠方まで強い降雨をもたらす。4.周辺の降水セルの複合的な働き、隣接する積乱雲の働き、あるいは周辺卓越風の時間変化に対応して、中層の乾燥空気、下層の湿潤空気の流入が変化することにより、システムの中のある積乱雲、あるいはある降水セルのみが著しく発達し、強い降雨の集中が起こる。5.湿潤な大気では、山岳の風上側で移動してくる降水セルに2段階の降水強化が起こり、また、山岳の形状、大きさと大気条件に依存して、山岳の風下側にも、降水セルを発達させると共に、移動してくる大気システムの降水を強化させる場所が生じる。これらの地形効果は豪雨の形成に重要な役割を果たしている。6.これらの成果にも基づいて、豪雨形成の予測に関する問題点と可能性を総合的にまとめた。
- ID情報
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- 課題番号 : 08408014
- 体系的課題番号 : JP08408014