Apr, 2020 - Mar, 2023
歯科領域からの革新的治療法の開発を目指した口腔細菌に起因するIgA腎症の病態解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
- Grant number
- 20K10225
- Japan Grant Number (JGN)
- JP20K10225
- Grant amount
-
- (Total)
- 4,290,000 Japanese Yen
- (Direct funding)
- 3,300,000 Japanese Yen
- (Indirect funding)
- 990,000 Japanese Yen
これまで、IgA腎症患者の唾液中にはコラーゲン結合能を有する Streptococcus mutans が高頻度で存在しており、これら菌株を保有する患者では、齲蝕経験歯数やタンパク尿の値が有意に高いことが報告されている。本研究の目的は、S. mutans の関連するIgA腎症発症のメカニズムを明らかにすることである。まず、IgA腎症患者より分離したコラーゲン結合能を有する S. mutans をラット頸静脈より投与し、15、30、45および60日後に尿を採取し、成分分析を行った。その結果、タンパク尿は菌投与後30日に非投与群と比較して有意に高い値を認めた。PAS染色像では、投与後30および45日の菌投与群では非投与群と比較してメサンギウム細胞および基質の増殖が認められた。一方で、投与後60日ではこれらの所見は認められなかった。さらに蛍光免疫染色像から、投与後30および45日の菌投与群のメサンギウム領域において、IgAおよびC3の有意な沈着が認められ、メサンギウム領域に高電子密度物質の沈着も確認された。ラット齲蝕モデルを用いた検討では、同 S. mutans 菌株をラット口腔内に定着させ齲蝕を誘発させた結果、菌投与群のプラークスコアと齲蝕スコアは非投与群と比較して有意に高い値を示した。菌投与群では、血尿陽性率は高く、PAS染色像では、メサンギウム細胞および基質の増殖が認められた。さらに蛍光免疫染色像では、メサンギウム領域において、IgAおよびC3の有意な沈着が確認された。
これらの結果から、ラットモデルにおいてIgA腎症患者より分離した S. mutans を頸静脈より投与した場合は、一過性に IgA腎症様腎炎の発症を認め、ラット口腔内に同菌株を定着させ重度齲蝕を誘発した場合には、長期間ラット体内に持続的に菌が侵入することでIgA腎症用様腎炎が発症することが明らかとなった。
これらの結果から、ラットモデルにおいてIgA腎症患者より分離した S. mutans を頸静脈より投与した場合は、一過性に IgA腎症様腎炎の発症を認め、ラット口腔内に同菌株を定着させ重度齲蝕を誘発した場合には、長期間ラット体内に持続的に菌が侵入することでIgA腎症用様腎炎が発症することが明らかとなった。
- Link information
- ID information
-
- Grant number : 20K10225
- Japan Grant Number (JGN) : JP20K10225