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2019年5月

胃腸虚弱で"八味地黄丸"が服用出来ない不妊症患者の老化予防に"啓脾湯"という選択肢

産婦人科漢方研究のあゆみ
  • 志馬 千佳
  • ,
  • 志馬 裕明
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  • 中井 恭子
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  • 蔭山 充
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  • 江川 美保
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  • 万代 昌紀

36
開始ページ
35
終了ページ
38
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
産婦人科漢方研究会

"八味地黄丸"は老化に伴う諸症状に効果があり、我々はこれまで老化に伴う不妊症にも有用であることを報告してきた。しかし、"八味地黄丸"は"地黄"による胃腸障害を起こす可能性があるため、胃腸が虚弱な患者には飲ませにくい。今回、不妊治療の老化予防を目的として"八味地黄丸"の代わりに"啓脾湯"を用いたので報告する。当院で2014年から2019年に"啓脾湯"を処方した患者は女性73例で、16例が妊娠に至った(タイミング療法は22例中6例、人工授精12例中2例、体外受精39例中8例、平均年齢40歳、妊娠率21.9%)。2015年から2017年に"八味地黄丸"を処方した68例中9例(13.2%)に胃腸障害を認め、漢方薬の副作用としては意外に多い。"八味地黄丸"の胃腸障害への対処は、[食前」から「食後」内服にする。"牛車腎気丸"に変更する。1日量を減量する。胃腸薬を同服する、"清心蓮子飲"に変更する、などがある。一方、「地黄が飲めない」ことは、漢方では「胃腸が弱い」ことに対処すべきであると捉えられ、「補気健脾」方剤を第一選択とすべきとされる。"啓脾湯"は、"四君子湯"に補腎剤の'山薬''蓮肉'、抗酸化作用を持つ'陳皮''山査子'を加えた方剤であり、胃腸虚弱の不妊患者の老化防止に有用である可能性がある。また、'山薬'に含まれるdiosgeninは、加齢による卵子老化に効果が報告されるサプリメント「DHEA」の原材料であることが知られ、昨今認知機能の改善作用も報告された。'山薬'を含む補気健脾剤は"啓脾湯"のみであり、胃腸が虚弱な不妊患者の老化防止に対して注目されるべき方剤である。(著者抄録)

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ID情報
  • ISSN : 0913-865X
  • 医中誌Web ID : 2020182917

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