論文

査読有り
2018年4月

禁煙補助薬としての甘麦大棗湯の可能性

産婦人科漢方研究のあゆみ
  • 志馬 千佳
  • ,
  • 志馬 裕明
  • ,
  • 中井 恭子
  • ,
  • 蔭山 充
  • ,
  • 江川 美保
  • ,
  • 万代 昌紀

35
開始ページ
144
終了ページ
148
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
産婦人科漢方研究会

タバコの煙には200種類以上の有害物質が含まれ、発がん性物質は70種類以上にものぼる。健康に悪いことは誰もが知っているにもかかわらず、いったん喫煙が習慣化すると禁煙するのは非常に難しい。今回ストレス症状の強いPMS患者に甘麦大棗湯を処方したところ、減煙できたので報告する。症例は35歳の未婚未妊の女性で、半年前から高齢の祖母の介護をするために実家で同居を始めた。祖母の攻撃的な言動を原因として不眠と抑うつ傾向になり、アルコールとタバコに逃げ、月経前には症状がひどくなるため当院受診となった。心療内科を併診し、SSRIとベンゾジアゼピン系睡眠薬を継続しながら、漢方薬を処方した。強いストレスに対して大柴胡湯エキス5.0g分2、便秘に対して潤腸湯2.5g分1、イライラしたら甘麦大棗湯を1包頓服することとした。2週間後には喫煙が1日10本に減らせた。4週の時点でイライラはましだが頭痛がひどく、イライラしたときにカーッと熱くなる症状があり、釣藤散7.5g分3、黄連解毒湯5.0g分2、甘麦大棗湯は継続。8週の時点で、頭がボーッとし、イライラが再燃、暴飲暴食して便秘で身体が重いというので、抑肝散7.5g分3、苓桂朮甘湯5.0g分2、防風通聖散2.5g分1に変更した。12週には、イライラに抑肝散が有効であり、甘麦大棗湯で喫煙が減らせていたが、雨の日に頭が重いというので、抑肝散7.5g分3と五苓散7.5g分3、甘麦大棗湯2.5gを頓用する処方に戻し、日々が何とか過ごせるようになってきた。甘麦大棗湯はヒステリー症状やPMSに効果があることが報告されており、精神状態の改善を欲して喫煙する場合には減煙効果が期待できる。本症例では、いまだ禁煙には至っていないが、甘麦大棗湯で禁煙を補助する試みとして初めて報告する。(著者抄録)

リンク情報
J-GLOBAL
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201802229420796038
URL
https://search.jamas.or.jp/index.php?module=Default&action=Link&pub_year=2018&ichushi_jid=J02194&link_issn=&doc_id=20180625120031&doc_link_id=%2Fev4kanpo%2F2018%2F000035%2F031%2F0144-0148%26dl%3D0&url=http%3A%2F%2Fwww.medicalonline.jp%2Fjamas.php%3FGoodsID%3D%2Fev4kanpo%2F2018%2F000035%2F031%2F0144-0148%26dl%3D0&type=MedicalOnline&icon=https%3A%2F%2Fjk04.jamas.or.jp%2Ficon%2F00004_2.gif
ID情報
  • ISSN : 0913-865X
  • 医中誌Web ID : 2018284619
  • J-Global ID : 201802229420796038

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