2021年3月
"甘麦大棗湯"の効果の分子栄養学的考察
産婦人科漢方研究のあゆみ
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- 巻
- 号
- 37
- 開始ページ
- 11
- 終了ページ
- 17
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 産婦人科漢方研究会
"甘麦大棗湯"は小児の夜泣きや女性の「ヒステリー」などに用いられ、'大棗''甘草''小麦'の三味からのみ構成されるため「食品ともいえる」としばしば表現される。"甘麦大棗湯"の劇的著効例は多くの漢方医が経験するところであるが、その作用機序はよく分かっていない。今回、"甘麦大棗湯"の分子栄養学的要素を確認するために、医療用エキス製剤の食品分析を行った。ツムラ甘麦大棗湯エキス顆粒(医療用)100g中、糖質84.8g(果糖8.85g、ブドウ糖7.87g、ショ糖2.51g、麦芽糖0.21g、乳糖51.5g)、食物繊維3.8g、蛋白質3.7g、脂質1.7g、鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、ビタミンB1、B2、B6、B12、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ナイアシンなども認める。アミノ酸は18種含み、トリプトファン25mg、グルタミン酸342mgなどが確認された。糖質は単糖、二糖が確認され、食物繊維も含むことで機能性低血糖症とよばれる血糖の乱れを安定させると考えられる。トリプトファンを含み、これをセロトニンやメラトニンに変化させるためのミネラル、ビタミンも同時に含む。また、グルタミン酸を含みGABAの生成も促す。これらの神経伝達系に関わる多種の栄養素が同時に摂取でき、「複雑系」として作用する可能性が示唆された。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0913-865X
- 医中誌Web ID : 2021203932