受賞

2015年11月

研究奨励賞

東京呼吸病態研究会
  • 石塚 聖洋
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  • 立石 知也
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  • 古澤 春彦
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  • 土屋 公威
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  • 藤江 俊秀
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  • 玉岡 明洋
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  • 坂下 博之
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  • 宮崎 泰成
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  • 稲瀬 直彦

タイトル
慢性過敏性肺炎における吸入誘発試験の有用性の検討
受賞区分
国内学会・会議・シンポジウム等の賞
受賞国・地域
日本

過敏性肺炎は、抗原吸入により発症する免疫学的疾患である。慢性過敏性肺炎(chronic hypersensitivity pneumonitis; CHP)では、画像所見から特発性間質性肺炎との鑑別に難渋する症例もあり、診断目的に外科的肺生検を行う事も稀ではない。CHPの診断において、特異抗体やリンパ球刺激試験は単独での診断能は低く、特異抗原による吸入誘発試験(inhalation provocation test; IPT)がgold standardとされている。しかし、原因抗原は様々であり、IPTの診断基準として統一されたものはなく、使用される指標も報告ごとに異なる。
当研究室では、2000年に鳥抗原によるCHPを対象として、鳩糞抽出物(pigeon dropping extracts; PDE)によるIPTに関して診断基準を提唱した。その後の11年間で130例に対してIPTを行ったが、外科的肺生検でCHPと診断された28例と、他疾患の診断がついた19例で比較検討を行い、2000年診断基準のvalidationと、有用性の高い新たな診断基準の作成を試みた。
検討項目は、呼吸器症状の有無、体温最大上昇幅、⊿%白血球数(⊿%WBC)(6,24時間後)、⊿CRP(6,24時間後)、⊿肺胞気動脈血酸素分圧較差(⊿A-aDO2)(6,24時間後)、呼吸機能検査(⊿VC、⊿DLCO)(24時間後)、胸部X線写真(24時間後)とした。
2000年診断基準に準拠すると、今回の検討では、感度 78.6%(22/28)、特異度 94.7%(18/19)、陽性的中率 95.7%(22/23)、陰性的中率 75.0%(18/24)であった。高い特異度、陽性的中率を保っており、臨床的有用性は高い診断基準と考えた。また、各項目に対してROC曲線を用いた比較検討を行ったところ、6時間後の⊿%WBC(AUC = 0.941, P < 0.001)、6時間後の⊿P(A-a)O2(AUC = 0.844, P < 0.001)、24時間後の⊿CRP(AUC = 0.878, P < 0.001)では高いAUCを認めたが、呼吸機能検査では2群に有意差は見られなかった。今回、stepwise法によるロジスティック回帰分析の結果を基に、新しい診断基準としてIPT-prediction score(IPT-PS)を提唱した。IPT-PS = ⊿%WBC + 2×⊿A-aDO2。IPT-PSのcut-off値を35とすると、今回の検討では、感度 92.9%(26/28)、特異度 94.7%(18/19)であった。また、IPT130例の中でIPT後に治療介入が必要となったのは2例(1.5%)のみであり、一定の安全性が確認された。