研究費成果概要

研究成果概要
<科学研究費補助金>

1) 「地域医療におけるリスク・ベネフィットコミュニケーション:薬局情報支援モデルの構築」(研究代表者:山本美智子)の情報提供サイト(平成26年4月~平成29年3月)

○Academic Detailingのための評価情報基盤:疾患と医薬品情報

http://www.ad-di.jp/


2) 被災地での放射線影響に関してなされたリスクコミュニケーションの評価に関する研究
科学研究費補助金(基盤研究C)研究代表者 吉田佳督
研究分担者 平成25年度~27年度
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/25460796.en.html

3) 薬のリスク等をテーマとした医療分野へのリスクコミュニケーションの応用に関する研究
The study on the application of risk communication to the medical field - with viewpoint of perception gaps between laypeople and medical practitioners-
科学研究費補助金(基盤研究C
)研究代表者 吉田佳督
 研究分担者 平成23年度~24年度
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/22590584.en.html



<厚生労働科学研究費補助金>

医療機器の国際的な情報交換のための基盤整備に関する研究(平成23年度)

 

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により、帝京平成大学、名古屋市立大学及び国立医薬品食品衛生研究所で共同研究を実施したものです。また、アンケート実施には、NPO法人Health Vigilance研究会、(社)千葉県薬剤師会、(社)千葉市薬剤師会の協力を得ました。

研究代表者 齋藤充生 帝京平成大学 薬学部 准教授

研究分担者 頭金正博 名古屋市立大学 薬学部 教授

研究分担者 佐井君江 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 室長

研究協力者 林譲 帝京平成大学 薬学部 教授

研究協力者 久保田洋子 帝京平成大学 薬学部 講師

研究協力者 飯嶋久志 (社)千葉県薬剤師会 薬事情報センター長

研究協力者 矢島毅彦 NPO法人Health Vigilance研究会 理事長

研究協力者 中崎知道 日本医療機器産業連合会 GHTF委員会委員長

研究協力者 石川廣 日本医療機器産業連合会 GHTF委員会元副委員長

研究の目的

医療機器は、医薬品と比べて、その種類や使用方法が多彩であり、また、製品の世代交代が早いため、我が国で承認・認証されている医療機器を網羅的に収載したデータベース(DB)はなく、海外での回収情報の確認や日本からの輸出の際に不便を生じています。本研究では、医療従事事者へのアンケート、海外DBの調査も踏まえ、我が国で販売されている医療機器を網羅的に確認できる医療機器DBの要件について調査検討しました。

研究の方法

NPO法人Health Vigilance研究会、(社)千葉県薬剤師会、(社)千葉市薬剤師会の薬局薬剤師に対するwebアンケートでは、医療機器DBの収載項目についての必要性、更新頻度、既存DBの認知度について調査を行いました。医療機器DBについては、インターネットからアクセスできる海外DBを参考に、現在PMDAより公開されている既存DBとの連携を図り、利用者の利便性の高いものとするよう、要件定義書の検討を行いました。また、合わせて、医療機器DBへのデータ蓄積の障害になりうる事項についても検討を行いました。

結果と考察

アンケート調査では、添付文書、回収情報、不具合情報及び医療安全情報のニーズと認知度が高く、月一回程度の更新が求められていることが判明しました。海外DBではFDADBが確認できましたが、基本的には項目毎に検索するタイプで、横断的な検索機能はありませんでした。医療機器DBの本体に格納するデータは、必要性の高い項目に限り、既存DBとリンクする方針とし、新規の製品は承認・登録時に逐次追加するのが適当と考えられました。検索画面では、販売名または一般的名称はあいまい検索とすること、承認番号、JMDNコードでも検索できるようにすること、製造販売業者からの更新機能を持たせること、品目情報に英語名を入れることとしました。システム構成について、現在、PMDAでは、平成26年からの「最適化次期システム」の検討が進んでいることから、医療機器DBは既存の「医薬品・医療機器情報提供システム」とは独立したDBシステムとして扱い、最終的に最適化次期システムに組み込む方針としました。

結論

医療機器DBは行政、企業に加え、医療関係者や患者・消費者にとっても、有用な物になると期待されます。また、医療機器DBへの掲載を契機に、承認申請等の電子化を進めることにより、医療機器審査業務の効率化が進むことも期待されます。

研究班報告書の詳細については、「厚生労働科学研究成果データベース」からご覧ください。


 

成果概要

薬事・食品衛生審議会における「審議参加に関する遵守事項」の運用上の課題に関する研究(平成20年度)

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により実施したものです。

研究代表者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部長

研究分担者 齋藤充生 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部主任研究官

研究の目的

製薬企業からの奨学寄附金等の活用と審議会委員としての活動に関して、利益相反が指摘されています。本研究では、審議会委員の現状や組織に対する利益相反を加味した審議会の参加に関する基準の早急な改訂に資することを目的として、国公立・私立大学の医学及び薬学部の一部、それに所属する教授の一部、及び薬事・食品衛生審議会委員を対象に奨学寄附金等に関するアンケート調査と欧米での最近の状況についての調査を実施しました。

研究の方法

医学部及び薬学部それぞれの約13、当該学部に所属する教授5名及び審議会委員に対してアンケート調査を実施し、組織に対する利益相反とその考え方等について調査・解析しました。また、海外当局への照会、website検索、現地調査等により、審議会委員の利益相反の取り扱いの最新情報についても調査しました。

結果と考察

学部調査では、殆どの大学で奨学寄附金に関する規程があり、機関経理がされてはいるものの、全てが明文化されてはいないことが判明しました。情報公開については、あまり学外に公表されておらず、情報公開請求があっても全く公表していない学部もあるなど公開は十分ではないと考えられました。教授調査では、講座内関係者の寄附金等は良く把握していましたが、それ以外はあまり把握していないこと、奨学寄附金等の受領に関連してバイアスを感じるとの回答は、低いが存在することが判明しました。審議会委員調査では、現在の奨学寄附金等に関する申告様式について、概ねこれで良いか、やむを得ないという意見が多く、受け入れられていると考えられました。海外調査について、欧米とも寄附金等に関する統計データはありませんでした。欧州は2009年にガイダンスを改訂する予定とのことでした。米国では、FDA改革法施行に合わせて2008年にガイダンスが改訂されましたが、組織に対する利益相反の金額水準については規定されておらず、今後の動きが注目されます。

結論

アンケート調査からは、組織に対する利益相反については、同一講座外への影響は少ないと考えられ、米国でも明確に規定されていませんでした。現時点では企業から研究者への研究費の受領については、あまり公開されていないと考えられ、今後は研究費のより透明化が進み、研究費の受領に関して国民に受け入れられることが期待されます。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

副作用症例報告に対する解析及び注意喚起の方法に関する研究(平成19年度)

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により実施したものです。

研究代表者 井上  達 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター長

研究分担者 埜中 征哉 国立精神神経センター武蔵病院・名誉院長

研究協力者 林  譲 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部室長

研究協力者 齋藤 充生 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部主任研究官

研究の目的

新しい医薬品が迅速に医療の場に提供されるようになり、市販後における医薬品安全対策の重要性が増しています。市販後安全対策については、(独)医薬品医療機器総合機構(総合機構)の設置など、新たな体制に改められ3年を経過したところですが、さらに体制充実が検討されるべきと考えられます。本研究では、医薬品の市販後安全対策の現状及び今後のあり方について、主に総合機構に着目して検討し、方策を提言します。

研究の方法

我が国の安全対策の現状について整理し、インターネット及び関連書籍等から収集した米国食品医薬品庁(FDA)、欧州医薬品庁(EMEA)、その他の海外規制当局における状況と比較検討し、国内外の各種報告書等も参考にとりまとめ、総合機構の安全対策業務の改善について提言を行うこととしました。その際、特に、市販後の副作用データの取り扱いや市販後安全性監視について分析し、また、我が国独自の市販直後調査に関する分析などに注目しました。

結果と考察

審査中からリスク管理計画を検討することで、安全性の確保だけでなく、より効率的な承認審査が期待できることから、個別品目毎に一貫してフォローする担当者が必要と考えられます。また、副作用症例報告への対応として、データマイニング手法による副作用情報のスクリーニング、薬剤疫学的手法の導入、ファーマコゲノミクスの活用などの予測予防型安全対策への強化が必要ですが、これらの実現のためには、資質を備えた人材の確保や、採用後のリスクマネジメントや社会的視点に関するトレーニングなどが必要と考えられました。さらに、最新の情報を反映した添付文書を通した医療従事者とのリスクコミュニケーションや、患者・一般国民への直接的な情報伝達についても、充実させる必要があると考えられました。海外においても、安全対策の強化が図られつつありますので、継続的な情報の収集が必要です。

結論

現時点での日本の安全対策は制度面では欧米に遜色ない水準にあると考えられますが、審査業務との連携として、承認審査段階からの安全対策が必要であり、ライフサイクルを通した安全性監視活動、市販後調査スタッフの審査チームへの参画などが必要と考えられました。また、副作用症例報告への対応として、副作用症例報告の調査分析、データマイニング手法の活用、頻度情報と薬剤疫学的手法の導入、予測予防型安全対策への参画が必要と考えられました。さらに、人的資源の質、量の両面での充実、医療従事者や患者への情報提供、海外との連携も必要と考えられました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

医薬品の市販後安全性研究等と利益相反の関係についての研究(平成19年度)

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により実施したものです。

研究代表者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部長

研究分担者 土屋文人 東京医科歯科大学歯学部付属病院 薬剤部長

研究協力者 齋藤充生 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部主任研究官

研究の目的

医薬品の安全性確保のため臨床研究は、大学病院等で実施され、研究資金として製薬企業による奨学寄附金等が活用されていますが、利益相反について指摘されるようになりました。社会的信頼性を維持し、適正な研究環境を整備するためには、製薬企業からの奨学寄附金、委託研究費等に関するガイドラインが必要であり、海外の利益相反に関する規程についての調査と合わせて、大学における利益相反マネジメントポリシーの内容等の実態把握と現在のおおよその水準を早急に把握することが喫緊の課題となっています。

研究の方法

医学部及び薬学部それぞれの約13、当該学部に所属する教授5名、及び協力を申し出た製薬企業に対して、アンケート調査を実施し、現時点における製薬企業からの奨学寄附金等の態様、研究成果の開示状況や活用状況に関する情報、利益相反に関する施設ガイドラインの有無や内容等を調査・解析しました。また、医師に対し、産学連携活動と利益相反に関するアンケート調査を行いました。海外当局等のホームページの検索等により、大学での利益相反の取り扱い及び医薬品の審査・評価に関する審議会等の委員の利益相反の規定について調査しました。

結果と考察

奨学寄附金、財団・社団等の団体からの研究助成金、臨床委託研究費は、1件又は1人当たりの金額は殆どが100万円以下でした。その他の委託研究費は、50万円以下~100万円の件数が最大でしたが1,000万円を超える場合もありました。講演料・原稿料は殆どがそれぞれ年間100万円・50万円以下でした。各大学における利益相反ポリシーは対応が始まったところと考えられました。医師には、産学連携活動や奨学寄附金の必要性を認める意見が多い一方、研究結果や審議会活動への影響を危惧する意見が多くありました。

海外の利益相反の取り扱いについて、大学では大学内の利益相反委員会での管理を行っていました。審議会等では、企業での雇用等の制限、研究費の上限設定、利益相反関係の公開などを行っていました。

結論

1件又は1人の研究者当たりの奨学寄附金、研究助成金、臨床委託研究費、非臨床委託研究費、講演料、原稿料は大半が100万円以下で、これらの結果は学部、教授、製薬企業の調査でほぼ同一の結果でした。医師には産学連携活動への理解の一方で中立性の懸念もありました。海外では、大学での利益相反は学内の利益相反委員会での管理を、審議会等では受領金額の制限や利益相反関係の公開などの措置をとっていました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究(平成17~19年度)

本研究は、平成17年度~19年度に、厚生労働科学研究費補助金により、国立医薬品食品衛生研究所、東京大学、国立がんセンターの共同研究として実施したものです。

研究代表者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部長

研究分担者 齋藤充生 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部主任研究官

研究分担者 北條泰輔 国立がんセンター中央病院 薬剤部長

研究分担者 山本弘史 国立がんセンター中央病院 薬剤部長

研究分担者 杉山雄一 東京大学大学院薬学系研究科 教授

研究分担者 頭金正博 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第二室長

研究の目的

添付文書解析、アンケートにより、有害事象に関わる相互作用の情報提供の現状と問題点を明らかにします。また、抗がん剤併用療法における有害事象情報を診療録調査から明らかにし、より安全ながん薬物治療に役立てます。一方、薬物間相互作用を予測するために、ヒト組織切片、あるいは薬物代謝酵素と薬物トランスポーターを組み込んだ評価システム系を構築します。

研究の方法

第二相薬物代謝酵素及びトランスポーターを介する薬物相互作用について、日米英の添付文書と文献情報との比較・検討を行い、さらに企業及び医師に対し添付文書に関するアンケート調査を行いました。抗がん剤併用療法に関しては、国立がんセンター中央病院における診療録調査を通じ、乳がんに使用されるトラスツズマブの心障害、infusion reactionの予測可能性を検討するとともに、大腸がん治療に用いる抗がん剤併用療法4レジメンについて有害事象発生率を調査し、添付文書等と比較しました。薬物間相互作用の実験研究では、ヒト腎組織切片や遺伝子発現系を用いたin vitro輸送試験により医薬品の阻害定数を測定し、さらに核内受容体リガンド投与・非投与によるマウスin vivo試験を行いました。また、ヒトCYP3A4P-gp関連遺伝子の発現プラスミドをヒト肝臓由来細胞のHepG2あるいは小腸由来のCaco-2に導入し、レポーター遺伝子の転写活性を測定しました。

結果と考察

グルクロン酸抱合、トランスポーターの添付文書情報は各国で類似しており、臨床現場でも支持されていました。抗がん剤併用療法における有害事象発生率の比較によって、患者の既往歴、投与法や支持療法の実施など条件の違いで発生する有害事象と発生率に違いが生じる可能性が明らかとなりました。薬物間相互作用の実験研究では、ヒト腎組織切片を用いた輸送実験系を確立し、種々薬剤による阻害定数を測定しました。また、トランスポーター阻害剤によりin vivoで血液中濃度が増加しました。レポーター遺伝子の転写活性を測定により、極めて鋭敏に種々の誘導剤による誘導を評価することができました。

結論

第二相薬物代謝酵素、トランスポーター情報の提供は概ね適切でした。抗がん剤併用療法において既往歴及び薬剤投与歴は副作用発現の予測につながります。薬物トランスポーターによる組織への取り込み過程・排出過程の機能阻害が、薬物間相互作用の要因となることが明らかになりました。CYP3A4あるいはP-gpin vivoでの誘導に類似したin vitro アッセイ系が確立できました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究(平成19年度)

(3年計画の3年目)

本研究は、平成17年度、18年度に引き続き、厚生労働科学研究費補助金により、国立医薬品食品衛生研究所、東京大学、国立がんセンターの共同研究として実施したものです。

研究代表者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部長

研究分担者 齋藤充生 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部主任研究官

研究分担者 山本弘史 国立がんセンター中央病院 薬剤部長

研究分担者 北條泰輔 国立がんセンター中央病院 薬剤部長

研究分担者 杉山雄一 東京大学大学院薬学系研究科 教授

研究分担者 頭金正博 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第二室長

研究の目的

添付文書の問題点把握のために、製薬企業及び医師にアンケート調査を実施しました。また、相互作用による有害事象報告をまとめました。トラスツズマブ療法に関する研究では、心障害、Infusion Reactionの発生状況に関し診療録調査及び関連因子について解析、評価を行いました。トランスポーターによる細胞膜透過過程における薬物間相互作用メカニズムとして、医薬品による発現誘導を検証しました。また、薬物相互作用に係わるP-糖タンパク質(P-gp)の活性型ビタミンD3による誘導応答を示す培養細胞系の確立を試みました。

研究の方法

日本製薬工業協会の協力を得て、会員企業に対して、郵送法によりアンケート調査を行いました。医師については、インターネットによるアンケート調査を行い、有害事象報告はPubmedにより収集しました。トラスツズマブ診療録から抽出した患者313名を対象とし、心毒性発現の関連因子はCox比例ハザードモデルにより単変量解析及び多変量解析を行い評価しました。またInfusion Reaction発現の関連因子はロジスティック重回帰モデルにより評価しました。核内受容体(PPARalpha)リガンド(WY14643)あるいは非ステロイド性抗炎症治療薬ibuprofenを前投与したマウスに基質薬物(methotrexate)を経口で与え、血液中濃度をLC/MSを用いて測定しました。また、小腸由来のCaco-2に、ビタミンD受容体(VDR)RXRを共発現させ、P-gp遺伝子(MDR-1)のプロモーター領域を用いたレポータープラスミドを用いて活性型ビタミンD3によるによる転写調節領域を同定しました。

結果と考察

添付文書の記載順序、相互作用の一覧表形式は高く支持されていました。相互作用による有害事象報告は86症例ありました。心障害関連因子は心疾患既往歴の関連が推定され、Infusion Reaction関連因子は抗がん剤治療歴の関連が推定されました。WY14643およびibuprofen投与群では、methotrexateの血漿中濃度が高くなることを見いだしました。ただし、mRNAレベルではトランスポーター群の発現誘導は見られませんでした。MDR-1遺伝子の上流領域を用いることによってP-gp誘導能を持ったin vitro アッセイ系を構築することが可能となりました。

結論

添付文書の改訂に関し製薬企業はやや慎重な立場でした。重篤副作用を起こす医薬品の組み合わせはデータベース化が必要と考えられました。トラスツズマブ投与による心障害及びInfusion Reaction発現の関連因子には、既往歴及び薬剤投与歴の関連が推定され、投与時の副作用発現予測につながります。WY14643及びibuprofenの効果は、トランスポーターmRNAの発現変動とは異なるメカニズムであることが示唆されました。P-gpの誘導能を持ったin vitro アッセイ系を構築することができました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究(平成18年度)

(3年計画の2年目)

本研究は、平成17年度に引き続き、厚生労働科学研究費補助金により、国立医薬品食品衛生研究所、東京大学、国立がんセンターの共同研究として実施したものです。

主任研究者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部長

分担研究者 齋藤充生 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部主任研究官

分担研究者 北條泰輔 国立がんセンター中央病院 薬剤部長

分担研究者 杉山雄一 東京大学大学院薬学系研究科 教授

分担研究者 頭金正博 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第二室長

研究の目的

トランスポーターを介した薬物相互作用については各国添付文書での情報提供の比較解析を行います。抗がん剤併用療法についてはトラスツズマブによる心障害およびInfusion reaction(IR)発生状況に関する抗がん剤併用との関連性を明らかにします。また、トランスポーターによる細胞膜透過過程における薬物間相互作用を定量的に予測するための評価方法の確立や、ヒト薬物代謝酵素等の誘導を制御する複数の核内受容体を培養細胞に共発現させた培養細胞系の確立を試みます。

研究の方法

トランスポーターを介した薬物相互作用については、日米英の添付文書と公表文献情報との比較・検討を行いました。国立がんセンター中央病院ではモノクローナル抗体の抗がん剤のトラスツズマブ投与歴を有する乳がん患者の診療録およびオーダリングシステムを2001612月までの期間、321名について調査しました。手術中に全摘出されたヒト腎組織から調製した組織切片とヒト薬物トランスポーターの過剰発現系を用いた試験管内の輸送実験を行いました。また、レポーター遺伝子と核内受容体のPXRおよびVDRの発現プラスミドをヒト培養細胞に導入し、転写活性を測定しました。

結果と考察

各国のトランスポーターの記載はあまり一致しておらず、また文献上の有害事象報告は添付文書に殆ど反映されていませんでした。トラスツズマブの前治療歴や併用薬剤で心障害発生割合に違いはありませんでした。IR発現率は約30%確認され、ステロイド剤を有する抗がん剤前投薬群では、IRは小さい傾向が見られました。薬物トランスポーター実験では、種々薬剤による阻害定数を測定し、臨床投与量で得られる非結合型薬物濃度で薬物トランスポーター機能を阻害する薬剤を見出しました。また、HepG2VDRPXRを共発現させCYP3A4遺伝子の転写活性を調べたところ、リガンド非依存下のPXRVDRによる転写活性を抑制しました。

結論

トランスポーターに関する情報は、今後の研究結果を適切に添付文書に反映する必要があると考えられます。トラスツズマブの心障害は前治療歴や併用薬剤の差異によらず、5%程度の発生割合を有し、またIRリスクの予防法としてステロイド剤の前投薬の選択も一案と考えられました。腎排泄過程の薬物間相互作用には、管腔側の排出輸送を阻害するものも含まれることを明らかにしました。OATP1B3による肝取り込み阻害も薬物間相互作用を生じる要因となることが分かりました。PXRVDRを共発現させた場合、それぞれを単独で発現させた場合のCYP3A4遺伝子の転写と異なる特徴を示しました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究(平成17年度)

(3年計画の1年目)

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により、国立医薬品食品衛生研究所、東京大学、国立がんセンターの共同研究として実施したものです。

主任研究者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部長

分担研究者 三宅真二 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第一室長

分担研究者 北條泰輔 国立がんセンター中央病院 薬剤部長

分担研究者 杉山雄一 東京大学大学院薬学系研究科 教授

分担研究者 頭金正博 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第二室長

はじめに――医薬品の相互作用研究について――

医薬品は、服用した後に、体内で代謝され、作用がなくなったり、逆に、元の医薬品より、作用が強くなったり(代謝活性化)します。医薬品の代謝には、小腸や肝臓に存在する薬物代謝酵素P450 (CYP)などが関与する第一相代謝と、その後、ひき続き起こるグルクロン酸抱合などの第二相代謝があります。

また、有機アニオントランスポーター(OATP)P糖タンパク(MDR-1)と呼ばれる薬物トランスポーターが、多くの薬物の体内での吸収・分布・排泄に関与していることも分かってきました。

これらの医薬品の代謝酵素、薬物トランスポーターを介して、様々な医薬品相互作用が起こることが知られています。

私たちは、平成1516年度に実施した研究で、医療従事者の基本的な情報源である医薬品の添付文書におけるCYPに関する情報提供の現状について明らかにするとともに、柑橘ジュース類の臨床薬物動態への影響やスタチン系薬剤およびカルシウム拮抗剤の添付文書における薬物相互作用の記載状況について解析を行い、医療従事者へのアンケート調査結果を参考に、添付文書の記載のあり方について提言を行ってきました。

研究の目的

有害事象に関わる薬物動態相互作用の添付文書による情報提供の現状と問題点を明らかにします。また、抗がん剤併用療法における有害事象情報を明らかにして、より安全な薬物治療に役立てます。さらに、基礎的研究として、トランスポーターによる細胞膜透過過程における薬物間相互作用を定量的に予測するための評価方法の確立や、医薬品の代謝相互作用を評価するためのインビトロアッセイ系を構築することを目指します。

研究の方法

第二相薬物代謝酵素を介する薬物相互作用について、日米英の添付文書を調査・比較しました。国立がんセンター中央病院では抗がん剤の併用療法として5FU/l-LVCPT-11FOLFIRIFOLFOX療法の有害事象発生率を診療録より収集し、単剤投与と併用投与での発生率の違いを解析するとともに、添付文書における副作用発生率と比較しました。また、ヒト腎組織から切片を作成し、メトトレキサート(MTX)の取り込みに対するNSAIDsとプロベネシドによる阻害効果を検討しました。ヒト肝癌由来培養細胞株HepG2では、CYP3A4のプロモーター領域を用いたレポータープラスミドとヒトCAR、ヒトVDR、ヒトPXRの発現プラスミドを種々の組み合わせで共トランスフェクションし、転写活性を測定しました。

結果と考察

日本の添付文書では10成分についてグルクロン酸抱合に関する使用注意または禁忌があり、日米英で同程度の情報提供がされていましたが、機序等の記述を新しくすべきと思われました。抗がん剤併用による有害事象については現在解析中ですが、有害事象を日常診療と添付文書とで比較検討した結果をもとに薬剤管理指導業務に反映させ、安全ながん薬物療法に貢献したいと考えています。また、ヒト腎組織切片を用いた輸送実験系を確立し、NSAIDsとプロベネシドによるMTXの取り込み阻害を示しました。HepG2細胞におけるCYP3A4の誘導では、リガンド非依存下のhPXRhVDRは、hCAR転写活性能の抑制を確認しました。

結論

第二相薬物代謝酵素に関する添付文書では緊急に改正すべき事項はありませんでした。抗がん剤併用での有害事象発生率の比較では、投与法や支持療法の実施など条件の違いによる発生率の違いが生じる可能性が明らかとなりました。一部のNSAIDsとプロベネシドについては、腎での取り込み過程の阻害の結果、MTXの消失遅延が生じたことが示唆されました。また、HepG2細胞を用いて、インビボに近い条件でCYP3A4の誘導を評価するインビトロアッセイ系を構築しました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

薬物代謝酵素が関与する医薬品相互作用の添付文書等による適正な情報提供に関する研究(平成15~16年度)

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により実施しました。

主任研究者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部長

分担研究者 浦野 勉 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第1室長

分担研究者 三宅真二 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第1室長

分担研究者 頭金正博 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第2室長

協力研究者 齋藤充生 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部主任研究官

協力研究者 平田睦子 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部技術補助員

はじめに――医薬品の相互作用について――

ある種の医薬品と医薬品、医薬品と食品の飲み合わせにより、医薬品の効果が予想以上に強く現れたり、逆に、期待した効果が得られなくなったりする場合があります。

これを、医薬品の相互作用と呼んでいます。

医薬品は、服用した後に、体内で代謝され、作用がなくなったり、逆に、元の医薬品より、作用が強くなったり(代謝活性化)します。医薬品の相互作用として、事例が多く、特に重要なものは、医薬品の代謝に影響を及ぼす場合です。

最近では、医薬品の代謝や相互作用に関する研究が活発に行われており、小腸や肝臓に存在する薬物代謝酵素P450 (CYP)と呼ばれる代謝酵素や、有機アニオントランスポーター(OATP)P糖タンパク(MDR-1)と呼ばれる薬物トランスポーターが、多くの薬物の体内での吸収・代謝・分布・排泄に関与していることが分かってきました。

このように、多くの医薬品(と一部の食品成分)が、同じ経路を利用していることが、相互作用の原因となっています。

医薬品代謝を介した相互作用のうち、CYPが関係するものについては、これまでかなり基礎的な研究が進んできており、CYPにもいくつかの種類(分子種)や個人差があることが判明しました。これらのCYPは、基本的な性質は共通していますが、代謝する医薬品の種類や代謝する速度が異なります。

また、医薬品の相互作用を調べるために、研究ボランティアの方に実際に2種類の医薬品を飲んでいただき、血液中の医薬品の濃度が、1種類だけを服用した場合に比べてどのように変化するかについても多数の研究が行われております。

研究の目的

すでに述べましたように、医薬品相互作用については様々な研究が行われており、これまでの研究成果を十分に活用することにより、医薬品相互作用による有害反応等を、かなりの程度、未然に防止することが可能であると考えられます。

医師や薬剤師等の医療従事者に対しては、医薬品適正使用に重要な情報は「医薬品添付文書」として提供されています。

医療用医薬品添付文書は、医療従事者にとって、必要な情報を分かりやすく伝えるため、例えば、相互作用については表形式を採用するなど、統一的な記載要領が示されています。

医療用医薬品添付文書は、科学進歩に伴い内容の適正を図る必要がありますが、CYPに関しては、添付文書による情報提供が必ずしも充実していないと考えられ、医療従事者の適正使用を妨げる要因の一つと考えられます。

このため、本研究では、有用で使いやすい添付文書の記載内容のあり方について、医薬品相互作用の周辺研究を踏まえて検討しました。

研究の方法

医療用医薬品添付文書集を用いて、医療用医薬品添付文書中に記載されているCYP関連記載の調査を行いました。

また、一部の医薬品との相互作用が報告されている柑橘ジュース類の薬物代謝への影響、スタチン系薬剤(高脂血症薬)およびCa拮抗剤(降圧薬)と他剤との相互作用について、最新の科学的知見に基づき体系的な評価を行い、国内外の添付文書情報と比較しました。

また、添付文書による有用な情報提供のあり方について医療従事者にアンケート調査を実施しました。

これらの調査・解析結果から、添付文書等の医薬関係者への医薬品相互作用の情報提供において、有用で適正な記載内容のあり方を統括して考察しました。

結果と考察

添付文書中のCYP関連情報の記載は年次ごとに充実し、承認取得年が新しいものほど、記載が充実していることが判明しました。

スタチン系薬剤およびCa拮抗剤について、日本の添付文書では、文献情報から得られた薬物動態学的な変化に関する定量的データが十分に記載されていない場合があることが判明しました。

一方、柑橘類ジュースと薬剤との相互作用については、グレープフルーツジュース摂取による臨床薬物動態への影響に関しては、36薬剤でAUCCmaxの増加、2剤でAUCCmaxの著しい減少が認められ、それぞれ小腸CYP3A4、小腸OATPの抑制によると考えられました。

また、その他の柑橘ジュースでも薬物動態に影響が報告されていました。

アンケート調査では、医療用医薬品添付文書の相互作用欄に個別医薬品名、重要度、薬物動態データの変化率、投与条件について追加すべきとの意見が多くありました。

以上に基づいて、スタチン系薬剤を題材に、文献情報に基づいた相互作用を追加記載したモデルを作成しました。

結論

医療用医薬品の添付文書中のCYPに関する文献情報は年々充実してきているものの、未だ、添付文書中では、それらの情報が十分に反映されていない可能性が示されました。

相互作用によるリスクの評価及び回避のためには、代謝に関与する酵素名や、定量的な血中濃度の変化値などの情報を反映していく必要があると考えられます。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

薬物代謝酵素が関与する医薬品相互作用の添付文書等による適正な情報提供に関する研究(平成16年度)

(2年計画の2年目)

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により実施しました。

主任研究者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部長

分担研究者 三宅真二 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第1室長

分担研究者 頭金正博 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部第2室長

協力研究者 齋藤充生 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部主任研究官

協力研究者 平田睦子 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部技術補助員

研究の目的

医薬品相互作用による有害反応等は、相互作用に関する十分な知識・情報から未然に防止することが可能です。医薬品適正使用に重要な情報は「医薬品添付文書」として提供され、科学進歩に伴って内容の適正を図る必要があります。薬物代謝酵素P450については、各分子種と医薬品の代謝・相互作用に関し多数の科学論文が発表され、SNPs等遺伝子的な解析も進みつつある中で、添付文書による情報提供が必ずしも充実しておらず、医薬関係者の適正使用を妨げる要因の一つと考えられます。本研究では、有用で使いやすい添付文書の記載内容のあり方について、医薬品相互作用の周辺研究を踏まえて検討することを目的とします。

研究の方法

20種類のCa拮抗剤と他剤との薬物動態相互作用について、最新の科学的知見に基づき体系的な評価を行い、日本、米国、英国の添付文書記載状況との比較・検討を行いました。また、公開新薬承認情報を基に、開発段階でのCYP特定試験の実施率およびその添付文書への反映状況について調査・解析を行いました。さらに、添付文書中の医薬品等相互作用及び薬物動態等に関する記載内容について、320医療機関にアンケート調査を実施しました。これらの結果から有用で適正な添付文書記載内容のあり方を考察し、スタチン系薬剤との薬物動態相互作用について、添付文書改定案を作成しました。

結果と考察

日本のCa拮抗剤の添付文書は、薬物動態変動に関する定量的データの記載が十分でなく、特に、影響がない場合は記載がありませんでした。また、CYP特定試験実施率は年々増加していましたが、CYPが関与しない場合は添付文書に反映されていませんでした。アンケート調査では、現行の添付文書の記載順序、形式が支持される一方、相互作用欄に個別医薬品名、重要度、薬物動態変化率及び投与条件を追加すべきとの意見が多くありました。これらを基にスタチン系薬剤の文献情報に基づき作用機序、定量的数値、追加薬剤等を相互作用の表中に加筆・修正した改定案作成を試みましたが、ボリュームは殆ど増えず、表形式で簡潔に情報提供するという現在の添付文書の基本的な考え方を損ないませんでした。

結論

CYPに関する情報は年々充実してきているものの、医薬品の添付文書中では、それらの情報が十分に反映されていない可能性が示されました。相互作用によるリスクの評価及び回避のためには、代謝に関与する酵素名や、定量的な血中濃度の変化値などの情報を反映していく必要があると考えられました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

薬物代謝酵素が関与する医薬品相互作用の添付文書等による適正な情報提供に関する研究(平成15年度)

(2年計画の1年目)

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により実施しました。

主任研究者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部長

分担研究者 浦野 勉  国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部室長

分担研究者 頭金正博 国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部室長

研究協力者 齋藤充生 国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部主任研究官

研究協力者 平田睦子 国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部技術補助員

研究の目的

医薬品相互作用により生じる有害反応等の発生は、相互作用に関連する十分な知識・情報からそれを未然に防止することが可能となります。医薬品の副作用等の安全対策や適正使用に重要な情報は「医薬品添付文書」として提供されていて、科学進歩に伴ってその内容の適正を図る必要があります。近年、医薬品相互作用に関する分野は、広く研究対象とされてきており、特に薬物代謝酵素P450(CYP)の分子種と医薬品の代謝・相互作用に関してSNP等遺伝子的な解析が進みつつありますが、それらの添付文書情報による提供が必ずしも充実していないのが現状です。このことは、専門的知識を有する医薬関係者がスムーズに医薬品の適正使用を実施することを妨げる要因の1つと考えられます。本研究では、医薬関係者の専門的な見地からの適正使用の判断材料となる有用で使いやすい具体的記載内容のあり方、考え方について、医薬品相互作用の周辺研究を踏まえて検討することを目的として、医薬品添付文書の相互作用に関するCYP情報の記載状況の調査・解析、相互作用に関する文献情報の調査・解析、相互作用に関する医療機関関係者へのアンケート調査の予備的検討を行いました。

研究の方法

添付文書については、日本医薬品集DBの情報を基に、CYPの記載がある医薬品数の年次ごと変化及び各年に承認された新医薬品ごとの記載状況(20034月現在)の調査を行いました。また、文献情報の解析については、HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)と他剤との相互作用についてはMedlineによる全データの解析を、柑橘類ジュースと薬剤との相互作用については1998年に2つの総説があったことから、その総説以後の文献をMedlineにより検索し全データの解析を行いました。これらの情報に基づいて、本年はスタチン系薬剤と他剤との相互作用に関する情報について、添付文書記載状況との比較・検討を行いました。また、これらの添付文書解析並びに文献解析を参考に医薬品相互作用に関するアンケート調査の設問内容の検討を行い、医療機関へのパイロット調査を実施しました。

結果と考察

20034月現在、11.8%の医薬品の添付文書中にCYP関連情報が記載されていました。また、9.6%の添付文書中にCYP分子種が記載されており、そのうちの65%CYP3A4でした。この他、CYP2D6,CYP1A2, CYP2C9の記載が多く見られました。20001月から20034月までの推移を調査したところ、添付文書中のCYP関連情報の記載は年次ごとに充実してきていることが分かりました。1991年以降に承認された医薬品の承認取得年別調査を行ったところ、承認取得年が新しいものほど、CYP関連情報の記載が充実していることが分かりました。スタチン系薬剤については、添付文書中に代謝に関与するCYP分子種の記載がありましたが、薬物動態の項のみの記載で、相互作用欄には具体的な情報が記載されていない事例もありました。また、CYP3A4で代謝されるシンバスタチンとアトルバスタチンについて、文献情報と日米の添付文書記載状況の比較を行ったところ、日米とも、具体的な血中濃度の変化率や、併用時の対処法について触れられていない、文献上の相互作用の大きさと添付文書上の位置づけが一致しない、などの事例がありました。柑橘類ジュースと薬剤との相互作用については、グレープフルーツジュース摂取による臨床薬剤動態への影響に関して56薬剤についての報告があり、そのうち36薬剤のAUCCmaxの増加が認められました。これは小腸CYP3A4の不可逆的抑制によると考えられましたが、P-糖タンパクの抑制もいくらか関与していると推定されました。一方、2剤についてはAUCCmaxの著しい減少が認められ、それは小腸OATPの抑制による吸収阻害であると考えられました。また、他の柑橘類ジュースとしてセビリアオレンジジュースや一般のオレンジジュースによっても数種の薬剤のAUCCmaxがかなり影響を受けることが明らかとなりました。グレープフルーツジュースに存在する作用有効成分についての研究がかなり行われていますが、いまだ確立した結論は得られていませんでした。

結論

CYPに関する研究の進展、添付文書記載要領の改訂や関連するガイドラインの公表などにより、CYPに関する情報は年々充実してきているものの、承認取得年が古い医薬品の添付文書中では、それらの情報が十分に反映されていない可能性が示唆されました。相互作用によるリスクの評価及び回避のためには、代謝に関与する酵素名や、定量的な血中濃度の変化値などの情報を反映していく必要があると考えられました。グレープルーツジュースのみならず、セビリアオレンジジュースや一般のオレンジジュースによりある種の薬剤の血中濃度がかなり影響を受けることが明らかとなったので、その機構をさらに検討するとともに、添付文書での記載状況の解析や記載方法の検討が必要であると考えられました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。

 

成果概要

諸外国における医薬品安全対策の緊急調査研究(平成14年度)

本研究は、厚生労働科学研究費補助金により実施しました。

主任研究者 長谷川隆一 国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部長

協力研究者 浦野 勉 国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部室長

協力研究者 小泉睦子 国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部

研究の目的

これまで幾度も医薬品によるとされる健康被害が発生し、その都度、医薬品の安全対策は強化されており、平成9年(1997年)の薬事法改正では、全ての医薬品を対象に同一成分の外国措置情報や国内外の感染症発生について報告する義務が課せられました。一方、諸外国において様々な理由により医薬品の販売が中止される場合があります。たとえば、鎮痛剤フェナセチンは諸外国においては10年以上前に副作用等が原因で販売が中止されましたが、国内では2001年になって供給停止となりました。また、フェニルプロパノールアミンは2002年に米国で安全性上の理由で販売が中止されたものの、国内では医療実態等の状況を鑑みた行政判断により販売が継続されました(注:その後、我が国でも販売中止)。このように、諸外国の医療制度や実態を始め、社会状況等により医薬品のリスク・ベネフィットの評価や安全対策の実施も異なっていると考えられます。

本研究では、諸外国で副作用等の安全性を理由に販売が中止された医薬品で、我国で販売が継続されている医薬品について調査し、国内の安全対策上の対応状況を明確にする目的で検討を行いました。

研究の方法

WHO(世界保健機関)、FDA(米国食品医薬品局)、EMEA(欧州医薬品審査庁)及びMCA(英国医薬品庁)のホームページを中心に公表されている資料を基に調査を行いました。国内については、厚生労働省公表資料、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構ホームページ及び200210月出版の日本医薬品集を調査し、諸外国の状況との比較を行いました。なお、研究対象の医薬品を副作用等の健康被害を理由にした措置を受けた薬効を持つ化学医薬品とし、生物製剤やハーブ類は除外しました。また、複数国では注意喚起を行うのだけの措置であっても一国のみ販売中止措置が実施された場合や、一部の剤形や用量のみが販売中止となった場合についてもカウント対象としました。

結果と考察

諸外国で販売が中止された医薬品については、販売が中止された国、販売中止の状況、時期、理由、その他の措置情報を調査しました。調査したホームページで販売中止措置が行われた旨公表されていた医薬品は307種あり、副作用等の安全性を理由にした販売中止医薬品は91種類(重複を除く)ありました。なお、調査の中で特にWHOの情報は極めて断片的だったため、販売中止に至った副作用の発現状況等の詳細については、情報入手が出来ませんでした。

外国で副作用等安全性を理由にした販売中止医薬品91種類のうち、国内で販売されている成分を調査した結果、20種類が販売されており、それらについて適応、剤形、副作用等の注意喚起状況について医薬品添付文書から調査を行いました。これらの医薬品については、外国で問題となった適応や用法がない、あるいは限定されている場合、問題となった投与経路や剤形がない場合、諸外国で問題となった点について添付文書で禁忌や重大な副作用の項で注意喚起や情報提供を実施している場合のあることが調査により明らかとなり、適正な対応がなされていると考えられました。

結論

諸外国において、副作用等の安全性の問題により販売が中止された医薬品は91種類あり、そのうち国内で現在も販売されている医薬品は20種類ありました。この20種類の販売状況を調査した結果、それらのすべての医薬品は外国で問題となった点について、適応、用法、剤形・用量がないあるいは限定されている場合や医薬品添付文書で注意喚起や情報提供等の安全対策が実施されていることが明確となりました。

研究班報告書の詳細については、「厚生労科学研究成果デタベース」からご覧ください。