2020年4月 - 2022年3月
氷期を生き延びた遺存植物の気候変動に伴う分布変遷の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 特別研究員奨励費
温暖湿潤な海洋性気候に属する日本列島の中には、寒冷乾燥な大陸性気候に適応した北東アジアの大陸部と共通する樹木種群が特異的に隔離分布している。これらの樹種は約2万2千年前の最終氷期最寒冷期に日本列島に広く分布していたが、最終氷期以降の急激な気候変動によって日本では分布が縮小したと考えられていることから、氷期遺存種と呼ばれている。本研究では、これまで花粉分析や大型植物化石など断片的な証拠に基づいて推定することしか出来なかった氷期遺存種の分布変遷を分布予測モデルと呼ばれる統計モデルを用いて推定し、最終氷期以降の気候変動と氷期遺存種の分布変遷について理論的な裏付けを与えた。
(1)氷期遺存種であるチョウセンゴヨウ、ヤエガワカンバ、チョウセンミネバリを対象に分布予測モデルを用いて最終氷期最寒冷期の潜在生育域(環境条件からみて種が潜在的に生育可能な地域)を予測した結果、チョウセンゴヨウは本州北部から九州に広く分布していたと予測され、大型植物化石の産出パターンとよく一致した。
(2)最終氷期以降の急激な冬季の気温上昇と夏季の降水量の増加が寒冷乾燥気候に適した氷期遺存種の日本における分布縮小に大きな影響を与えたことが示された。一方、これらの種群は現在、中国北東部、朝鮮半島、極東ロシア沿海州に広く分布しており、最終氷期最寒冷期には朝鮮半島や中国東部に南下していたが、最終氷期以降の温暖化によって北上し、分布が拡大したと予測された。
(3)生態的な情報が少なかったチョウセンミネバリについて、本州中部山岳で生育環境と森林植生調査を行った。本種は冷温帯の谷部や斜面下部に生育し、モミ・ツガの針葉樹林、ミズナラ二次林、トチノキやサワグルミなどの湿性林に生育することを明らかにした。
(1)氷期遺存種であるチョウセンゴヨウ、ヤエガワカンバ、チョウセンミネバリを対象に分布予測モデルを用いて最終氷期最寒冷期の潜在生育域(環境条件からみて種が潜在的に生育可能な地域)を予測した結果、チョウセンゴヨウは本州北部から九州に広く分布していたと予測され、大型植物化石の産出パターンとよく一致した。
(2)最終氷期以降の急激な冬季の気温上昇と夏季の降水量の増加が寒冷乾燥気候に適した氷期遺存種の日本における分布縮小に大きな影響を与えたことが示された。一方、これらの種群は現在、中国北東部、朝鮮半島、極東ロシア沿海州に広く分布しており、最終氷期最寒冷期には朝鮮半島や中国東部に南下していたが、最終氷期以降の温暖化によって北上し、分布が拡大したと予測された。
(3)生態的な情報が少なかったチョウセンミネバリについて、本州中部山岳で生育環境と森林植生調査を行った。本種は冷温帯の谷部や斜面下部に生育し、モミ・ツガの針葉樹林、ミズナラ二次林、トチノキやサワグルミなどの湿性林に生育することを明らかにした。
- ID情報
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- 課題番号 : 20J00825
- 体系的課題番号 : JP20J00825
この研究課題の成果一覧
絞り込み
受賞
2論文
4-
植物地理・分類研究 69(2) 207-210 2021年11月 査読有り筆頭著者
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Applied Vegetation Science 24(4) 2021年10月 査読有り
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Plant Ecology 222(7) 843-859 2021年7月 査読有り筆頭著者
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植生学会誌 38(1) 49-66 2021年 査読有り筆頭著者
講演・口頭発表等
4-
日本植生史学会第36回大会 2021年10月31日
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植生学会第26回大会 2021年10月15日
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第四紀学会2021年大会 2021年8月28日
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植生学会第25回大会 2020年11月14日