ガラクチノール合成酵素（Galactinol synthase, GolS） は<i>myo</i> - イノシトールとUDP- ガラクトースからガラクチノールを合成する酵素であり、ラフィノース族オリゴ糖類（Raffinose family oligosaccharide, RFO）合成経路の初発反応を触媒する。植物体に蓄積するRFO、ガラクチノール、<i>myo</i> - イノシトールは適合溶質としての機能などが示唆されているが、生体内でのはっきりとした役割は明らかではない。我々はセイヨウハコヤナギ（<i>Populus nigra</i>）の葉から6 種類の<i>GolS</i> 遺伝子を単離し、乾燥や塩ストレスに応答して発現量が顕著に増加する<i>GolS</i> 遺伝子（<i>PnGolS2</i> ）を見出した。<i>PnGolS2</i> を過剰発現した形質転換セイヨウハコヤナギ（OXGolS）の葉に含まれるラフィノース、ガラクチノール、<i>myo</i> - イノシトールの含量は、非形質転換体（non-transformant, NT）よりも顕著に増加した。また、OXGolS の気孔コンダクタンスはNT と比べると低下し、その結果、OXGolS の葉の蒸散速度は大きく減少していた。<i>PnGolS2</i> を過剰発現しても葉の浸透圧に大きな影響はなかったが、一方で、過剰発現によって葉の水ポテンシャルは大きく低下した。これらの結果は、乾燥・塩ストレス応答性<i>GolS</i> 遺伝子である<i>PnGolS2</i> を過剰発現すると、セイヨウハコヤナギの通導コンダクタンスを低下させることを示唆している。