MISC

2021年

当院入院患者におけるサルコペニアの有無が身体機能の推移に与える影響

九州理学療法士学術大会誌
  • 宮﨑 宣丞

2021
開始ページ
88
終了ページ
88
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.32298/kyushupt.2021.0_88
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会

【はじめに】

入院患者に対する現状把握・治療方針の決定を早期に行うために,当院では立位バランス,歩行,立ち座りで構成されるShort Physical Performance Battery(SPPB)を用いて身体機能を総合的に判定し,理学療法の方針決定に役立てている。また,サルコペニアを有する患者ではさらなる機能低下が予想されるため,患者特性に応じた理学療法介入は必要であると考える。しかし,サルコペニアに該当する入院患者における身体機能の推移に関して検討した報告は少ないという現状がある。そこで,本研究の目的は,入院患者におけるサルコペニアの有無が身体機能の推移に与える影響について,SPPB を中心に検討することとした。

【方法】

対象は65 歳以上の当院入院患者とした。選択基準は,評価時に10m 歩行や立位保持が可能な者とし,認知機能の低下が著しく,本研究の同意が得られなかった患者は除外した。評価は,初回評価時と3 週後に計測した。サルコペニアの有無は,歩行速度,握力,筋量を用いてAWGS2 の診断基準に従って判断した。その他の評価項目は,基礎情報(年齢,性別,算定疾患,入院期間)と身体機能(SPPB)とし,初回と3 週後の結果から変化量まで算出した。統計学的学検定については,サルコペニアの有無と身体機能の推移を比較するため,SPPB の合計点と各項目について,2 要因(測定時期,サルコペニアの有無)における反復測定の分散分析を行った。統計処理は解析用ソフトSPSS ver.25を用い,有意水準は5% 未満とした。

【結果】

サルコペニア群は11 名(87.9 ± 6.0 歳,女性10 名,運動器10 名,廃用症候群1 名),非サルコペニア群は6 名(80.2 ± 9.5 歳,女性5 名,運動器4 名,廃用症候群1 名,脳血管1 名)であった。反復測定の分散分析の結果,SPPBについての交互作用は認めなかったが(p>0.235),3 週後のSPPB の合計点は両群とも同様に増加した(サルコペニア群:2.7 点,非サルコペニア群:1.8 点,p=0.001)。また,SPPB の起立において,初回(サルコペニア群:0.91 点,非サルコペニア群:2.67 点)と3 週後(サルコペニア群:2.18 点,非サルコペニア群:3.50 点)のいずれもサルコペニア群において低値を示した(p=0.002)。

【考察】

今回,当院入院患者においてサルコペニアの有無による身体機能の推移について比較を行い,交互作用は認めなかったが,両群ともに3 週後のSPPB は改善を示した。しかし,サルコペニア群では初回,3 週後ともにSPPB の起立の項目が非サルコペニア群よりも低値を示した。これは,疾患やサルコペニア,加齢などが筋パワーを反映する起立動作能力低下に影響したと考えられる。そのため,サルコペニアを有する入院患者に対し,筋パワーや起立動作能力の低下が残存しやすい点などを考慮した理学療法を行うことで,より高い身体機能や活動レベルを獲得して目標とする転帰先へ復帰する症例の増加に繋がる可能性があると考える。

【まとめ】

サルコペニアに該当する入院患者における身体機能の推移として,起立動作能力の低下が残存する可能性が示された。今後も継続して症例数の蓄積を行い,高齢入院患者の身体機能の特徴に応じた理学療法評価・介入ができるように検討していきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,ヘルシンキ宣言に沿って実施し,対象者には事前に書面にて同意を得て実施した。また,所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した研究である(倫委第20-8 号)。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.32298/kyushupt.2021.0_88
CiNii Research
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390853908036561024?lang=ja
ID情報
  • DOI : 10.32298/kyushupt.2021.0_88
  • eISSN : 2434-3889
  • CiNii Articles ID : 130008154674
  • CiNii Research ID : 1390853908036561024

エクスポート
BibTeX RIS