共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2021年3月

エジプトのナショナリズムにおける民族概念と宗教的アイデンティティ

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究(B)  若手研究(B)

課題番号
17K13293
体系的課題番号
JP17K13293
配分額
(総額)
4,030,000円
(直接経費)
3,100,000円
(間接経費)
930,000円

2019年度は、エジプトの国史の中でコプトの歴史がどのように位置づけられたのかという点に焦点をあてて研究発表を行った。
まず、現在のエジプトの歴史教科書では、「コプト期(al-hiqba al-qibtiya)」とは1世紀後半の聖マルコによるキリスト教布教から7世紀前半のイスラーム到来までをカバーする時代であるが、この時代区分および呼称がいつ頃から現れてきたのかという点を調査した。
結果、1920年代~30年代頃であることが推測される状況証拠は見つかったが、資料収集が思うように進まず、2019年度中の調査ではこの説を支持するより確かな証拠は見つからなかった。
この調査を通して、19世紀末から20世紀最初の数十年間には、コプトの歴史家らが複数の歴史書を著しており、そこでの時代の区切り方はさまざまであること、そしてエジプトにおけるキリスト教布教以前の時代の扱いもさまざまであることが明らかになった。また、19世紀以前のコプトの歴史叙述はもとより、同時代のムスリムのエジプト人による歴史叙述、ヨーロッパ人の歴史叙述などからも影響を受けていることから、当初の想定よりも広範な史資料を精査する必要があると判明した。また、歴史の叙述についてのみならず、政治社会情勢も考慮に入れる必要があり、1922年のエジプト独立以後の経済のエジプト化とそれに伴うコプト富裕層のエジプト社会における存在感の高まり、教育制度の整備・拡充など多くの論点との関連を議論する必要もあることが明らかになった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13293
ID情報
  • 課題番号 : 17K13293
  • 体系的課題番号 : JP17K13293