膵炎の予防および治療にナファモスタットメシル酸塩(NM)が投与された患者を対象として、高カリウム(K)血症の発現頻度、患者背景を後方的に調査し、加齢に伴う高K血症発現の影響とその背景因子の探索を試みた。対象期間中のNMを投与された解析対象患者290例中、36例(12.4%)に高K血症が認められた。高K血症発現の有無における2群間の比較で、P<0.1を示した因子は、投与期間の年齢、日常生活動作(ADL)、発熱、体重、1日投与量、総投与量、投与日数、血清尿素窒素(BUN)、BUN/血清クレアチニン(Scr)、血清ナトリウム(Na)値、血清K値、C反応性蛋白(CRP)、感染症であった。呼吸器疾患を併発する患者では発現が少ない傾向があった。これらの因子について75歳未満と75歳以上(高齢者)の患者で比較したところ、高齢者群では、ADL非自立、呼吸器疾患、感染症を併発している割合が多く、体重、投与前血清Na値が有意に低く、BUN、BUN/Scr、CRPが有意に高かった。高K血症発現群の有無における2群間比較で単変量ロジスティック回帰分析を行った結果、発熱、体重、1日投与量、総投与量、投与日数、BUN、BUN/Scr、血清Na値、血清K値、感染症で有意水準P<0.05以下であった。多変量ロジスティック解析の結果、年齢、発熱、1日投与量、投与前血清K値が独立した危険因子であることが推察された。