共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2020年3月

バイアンテナ型糖鎖の準安定構造に関する構造生物学的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
17K07303
体系的課題番号
JP17K07303
配分額
(総額)
4,940,000円
(直接経費)
3,800,000円
(間接経費)
1,140,000円

糖鎖は単糖が重合した生命鎖で多様な配列および構造を取る。本研究の目的は糖鎖の配列と構造の相関を構造生物学的に明らかにすることであり、代表的な糖鎖としてN結合型糖鎖の一種、バイアンテナ型糖鎖を研究対象としている。2018年度はバイアンテナ型糖鎖を基質としてN-acetylglucosamine (GlcNAc)を転移する糖転移酵素、N-acetylglucosaminyltransferase-V (GnT-V)の反応メカニズムの解明に取り組んだ。GnT-Vはがん悪性化に関与する糖転移酵素として世界中で研究されているが、その詳細な反応メカニズムは不明である。興味深いことにGnT-Vの反応は、同じGlcNAc転移酵素であるGnT-IIIによって阻害される。GnT-IIIはGnT-Vと同様にバイアンテナ型糖鎖を基質とするが、異なる位置にGlcNAcを転移する。本来ならばGnT-IIIの反応はGnT-Vの反応に支障を来たさないはずである。我々は、この阻害機構はGnT-IIIによって生じる生成物糖鎖の構造がGnT-Vの基質として不適格な構造をしていることに起因すると予想した。つまり、GnT-Vの基質認識機構を明らかにすれば、本研究の目的である糖鎖の配列と構造の相関の解明に大きく寄与すると考えた。そこで我々は、GnT-V触媒ドメインについて動物細胞の発現系を用いて大量に調製し、単体および基質糖鎖との複合体の結晶構造をX線結晶構造解析によって明らかにした(Nagae et al., Nature Commuinications 2018)。得られた構造を見ると、GnT-Vの活性中心は深い溝になっており、糖鎖が溝に突き刺さるような状態で結合していた。この糖鎖構造を見るとGnT-IIIの生成糖鎖では取りにくい構造であった。つまり溝の形状によって糖鎖を選別している新しい機構が明らかになった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17K07303
ID情報
  • 課題番号 : 17K07303
  • 体系的課題番号 : JP17K07303