森 功次
基本情報
- 学位
-
博士(文学)(東京大学)
- 連絡先
- morinorihide
otsuma.ac.jp
- 研究者番号
- 30720932
- J-GLOBAL ID
- 200901043566567546
- researchmap会員ID
- 6000012758
- 外部リンク
2015年に「前期サルトルの芸術哲学――想像力・道徳・独自性」という題目で博士論文を提出しました(東京大学、美学芸術学研究室、このResearchmap上で全文公開しています)。
博士論文では主に哲学史的な研究に取り組んできましたが、博論執筆と並行して、不道徳作品をどう評価すべきか、というテーマでの研究も進めてきました(学振PD期)。また、博論提出後は、多元化・多様化した現代の文化状況の中で「芸術的価値」なるものをどう理解すべきか、というテーマの研究も行ってきました(ポスドク期、科研費若手B)。
現在は、「理想的観賞者説の改訂・展開による、複合文化的な美的経験論の構築」という研究課題に取り組んでいます。これは大枠でいえば、美的価値論、美的経験論というくくりに入る研究です。
以下、現在の研究について、もうすこし説明しておきます。
伝統的な美学・芸術哲学は、美的価値や芸術的価値を説明するにあたって、理想的観賞者(ideal appreciator)をモデルとして立ててきました。従来の説では、観賞や判断の基準を説明するにあたって、特定の能力(繊細な知覚能力、美術史の知識、十分な批評経験など)を備えた適格な観賞者を想定し、その者が行なうであろう観賞・判断を正しい観賞・判断としてきたわけです――このような説明手法を「理想的観賞者説」と呼ぶとしましょう。
だが、価値観が多様化した現代において、この説明手法ははたして有効だろうか、というのが、今の私の問題関心です。
従来想定されてきた理想的観賞者は、あまりに理想的すぎたのではないか。 そしてそのために、理想的観賞者説は、われわれ凡人の日常的な判断・ふるまいを説明できない説になってしまっているのではないか? こうした問いが本研究の出発点となるわけですが、その一方で、もうひとつの問題もあります。それは、理想的観賞者の想定を安易に捨て去り、各人の美的判断をすべて正しいとするような「なんでもあり」の美学理論は、それはそれで使い物にならない、という点です。従来の理想的観賞者説は、とりわけ判断の規範性・妥当性を説明するさいには、とても使い勝手がよいのです。
わたしの研究は、この問題ぶくみの従来の理想的観賞者説を改良し、現代版の新たな美的判断論を構築しようとするものです。
手順としては、まず、従来の理論を、1)理想的観賞者にはいかなる能力が求められてきたのか、2)理想的観賞者の想定がわれわれのふるまいにどう影響するのか、3)なぜ凡人は理想的観賞者を尊重せねばならないのか、といった観点から批判的に検討することで、従来の説の利点と弱点を明らかにします。
次に、その検討作業をふまえた上で、あらたな美的経験論の構築に取り組みます。従来の美的経験論に、1)どのような観賞を適切なものと想定しているか、2)その想定は自らの感情・感覚にどれほど根ざした想定であるのか(それとも社会的立場や知識に大きく影響されているのか)、3)自分の経験をその適切な観賞に従うべきものと考えているか、といった観点を組み込むことで、日常の、かつ周辺的な美的経験をより細やかに説明できる、新たな美的経験論が作れるのではないか。これが現段階での研究の見通しです。
わたしはさらに、こうした理論的考察をふまえて、これまで取りこぼされてきたさまざまな美的ふるまいを説明したいと考えています。最近では、「ネタバレ」や「子育て」といった事象を美学的に考える作業に取り組んでいます。
世の中には、美学的に考えると面白い事象がまだまだたくさんあります。美学の知見を応用しつつ、これまでの美学が取りこぼしてきたさまざまな文化事象を考察していきたい。これが、最近の研究の大きなモチベーションとなっています。
また上記の作業とあわせて、これまで日本であまり紹介されていなかった英語圏の分析美学を積極的に紹介していく、というのもわたしの研究目標のひとつです。主な訳書に以下のものがあります。
- ロバート・ステッカー『分析美学入門』(勁草書房、2013)
- ケンダル・ウォルトン「芸術のカテゴリー」(電子出版物、2015)
- ケンダル・ウォルトン「フィクションを怖がる」(西村清和編『分析美学基本論文集』収、勁草書房、2015)
- ノエル・キャロル『批評について:芸術批評の哲学』(勁草書房、2017)
- ドミニク・マカイヴァー・ロペス、ベンス・ナナイ、ニック・リグル『なぜ美を気にかけるのか:感性的生活からの哲学入門』(勁草書房、2023)
- Frank Sibley, Approach to Aesthetics, 2001, (共訳、勁草書房より出版予定)
また訳書の刊行にあわせてブックフェアや刊行記念ワークショップを企画するなど、アウトリーチ活動にも取り組んできました。美学という学問の面白さを世間に広めるためにも、こうした活動は今後も積極的に行っていきたいと考えています。
主要な経歴
13主要な書籍等出版物
17-
勁草書房 2023年8月1日 (ISBN: 4326852011)
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総合法令出版 2022年12月13日 (ISBN: 4862808816)
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勁草書房 2017年12月1日 (ISBN: 4326851937)
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新曜社 2017年8月 (ISBN: 4788515326)
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勁草書房 2013年5月15日 (ISBN: 4326800534)
論文
31-
発達 181 115-118 2025年2月 招待有り
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科学哲学 56(2) 111-115 2024年3月31日
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『ここからどう進む?対話型鑑賞のこれまでとこれから』 140-171 2023年9月 招待有り筆頭著者
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『世界最先端の研究が教える すごい哲学』 68-73 2022年12月
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『世界最先端の研究が教える すごい哲学』 64-67 2022年12月
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人間生活文化研究 31 365-381 2021年9月 査読有り
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美学の事典(美学会編) 590-591 2020年12月 招待有り
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美学の事典(美学会編) 70-71 2020年12月 招待有り
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『現代思想』特集:現代思想の総展望2021 49(1) 86-100 2020年12月 招待有り筆頭著者
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現代フランス哲学入門(川口茂雄・越門勝彦・三宅岳史編、ミネルヴァ書房、2020年) 194-194 2020年7月 招待有り
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現代フランス哲学入門(川口茂雄・越門勝彦・三宅岳史編、ミネルヴァ書房、2020年) 146-151 2020年7月 招待有り
-
人間生活文化研究 30 457-473 2020年7月 査読有り
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フィルカル 4(2) 76-101 2019年7月 招待有り
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よくわかる哲学・思想 2019年4月 招待有り
-
よくわかる哲学・思想 2019年4月 招待有り
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邂逅、岡山大学哲学倫理学会年報 (33) 2-17 2019年3月 招待有り責任著者
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フッサール研究 16 152-160 2019年3月 招待有り
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『現代思想』2017年12月臨時増刊号 総特集=分析哲学 154-168 2017年11月 招待有り
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Proceedings of ICA 2016 517-522 2016年12月
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Ágalma 32 64-74 2016年10月 招待有り
講演・口頭発表等
49-
東北哲学会第74回大会 2024年10月19日 東北哲学会 招待有り
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アートラボあいち大学連携プロジェクト2024【県芸・名芸・造形・学芸 夏休み連続講座】 2024年8月18日 アートラボあいち 招待有り
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第5回九鬼周造記念シンポジウム 「愛と人生の価値」 2024年3月18日 招待有り
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アートラボあいち大学連携プロジェクト2023【県芸・名芸・造形・学芸 夏休み連続講座】 2023年9月10日 アートラボあいち 招待有り
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豊田市美術館 豊田市図工美術部会自主研修会 合同主催 より良い鑑賞へのガイド(とその難しさ)について考える 2023年9月9日 招待有り
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美学会東部会特別例会 『なぜ美を気にかけるのか:感性的生活からの哲学入門』翻訳刊行記念ワークショップ 2023年8月28日 招待有り
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文化政策研究会(主催:小林真理、非公開研究会) 2023年4月29日 招待有り
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VTC/VTS日本上陸30周年記念フォーラム2022 「対話型鑑賞のこれまでとこれから」 2022年8月21日
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メルロ=ポンティ哲学研究会 2021年3月27日 招待有り
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第70回美学会全国大会開催校企画シンポジウム「あしたはどっちだ――美学会に未来はあるか?」」 2020年1月12日 招待有り
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瀬戸内哲学研究会、ワークショップ「芸術的価値」 2019年11月26日 招待有り
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宇宙開発フォーラム 2019年9月15日 招待有り
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第17回一橋哲学・社会思想セミナー:「分析美学セミナー」レクチャー講演 2019年7月12日 招待有り
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ワークショップ「ネタバレの美学」 2018年11月23日
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講演会 日常に根ざした言葉で哲学をするということ:飯田隆『新哲学対話』をめぐって 2018年7月28日 招待有り
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フッサール研究会第16回研究会、シンポジウム「現代現象学の批判的検討」 2018年3月17日 招待有り
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日本大学文理学部人文科学研究所 第13回哲学ワークショップ「美的経験、再考!」 2018年3月16日 招待有り
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国際ワークショップ:Art and Mind 2017年8月11日 招待有り
-
日本サルトル学会第38回研究例会 2016年12月3日 招待有り
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日本科学哲学会第49回大会 2016年11月20日 招待有り
MISC
23-
現代ビジネス 2024年5月25日
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豊田市美術館「吹けば風」展カタログ 52-71 2023年8月 招待有り筆頭著者
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フィルカル 7(3) 286-296 2022年12月 招待有り筆頭著者
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美術手帖 73(1090) 70-73 2021年9月 招待有り筆頭著者
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美術手帖 73(1090) 20-25 2021年9月 招待有り筆頭著者
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人間生活文化研究 31 409-419 2021年9月 筆頭著者
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現代ビジネス 2021年3月 招待有り
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フィルカル 5(3) 78-87 2020年12月 筆頭著者
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リディラバジャーナル 2020年4月 招待有り
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宇宙開発フォーラム実行委員会2019報告書 31-36 2020年2月 招待有り
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文春オンライン 2019年10月 招待有り
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現代ビジネス 2019年10月 招待有り
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フィルカル 4(2) 6-10 2019年7月 招待有り
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ベルナール・ビュフェ美術館館報 1 5-7 2016年6月 招待有り
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Synodos 2016年2月 招待有り
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2016年1月
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西村清和編『分析美学基本論文集』 301-334 2015年8月
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2015年6月
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『ユリイカ』 47-8(662) 246-246 2015年6月
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『エステティーク』 1 72-76 2014年6月 招待有り
委員歴
6-
2022年10月 - 現在
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2020年1月 - 現在
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2010年 - 現在
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2018年4月 - 2019年12月
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2015年12月 - 2016年10月
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2008年8月 - 2010年7月
担当経験のある科目(授業)
20共同研究・競争的資金等の研究課題
13-
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2024年4月 - 2029年3月
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大妻女子大学 戦略的個人研究費 2024年6月 - 2025年3月
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大妻女子大学 戦略的個人研究費 2023年6月 - 2024年3月
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文部科学省 科学研究費補助金(若手研究) 若手研究 2019年4月 - 2023年3月
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大妻女子大学 人間生活文化研究所 戦略的個人研究費 2020年4月 - 2021年3月
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大妻女子大学 戦略的個人研究費 2019年6月 - 2020年3月
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大妻女子大学 戦略的個人研究費 2018年7月 - 2019年3月
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文部科学省 科学研究費補助金(若手研究(B)) 若手研究(B) 2015年 - 2018年
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日本学術振興会 特別研究員奨励費 2012年4月 - 2015年3月
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大阪大学 文学研究科共同研究経費 2013年10月 - 2014年2月
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日本学術振興会 特別研究員奨励費 2010年4月 - 2012年3月
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国際高等研究所 学術道場プログラム 2010年11月 - 2011年2月
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東京大学グローバルCOE「死生学の展開と組織化」 若手支援研究経費 2008年10月 - 2009年2月
社会貢献活動
16