共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2021年3月

加齢性難聴が認知機能障害に与える影響に関する研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
17K11318
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,550,000円
(直接経費)
3,500,000円
(間接経費)
1,050,000円

加齢性難聴はコミュニケーション障害をきたすのみならず、認知機能にも影響するといわれている。超高齢社会を向かえた我が国にとって、認知症対策は避けて通れない喫緊の課題である。認知症は一旦発症すると有効な治療法がなく、早期発見、早期介入による発症予防が重要である。我々は、加齢性疾患を対象とした佐渡市の疫学研究(PROST 研究)において、加齢性難聴と脳血管障害、糖尿病、腎障害など他の加齢性疾患との間にその発症や程度に有意な相関のあることを発表してきた。本研究では加齢性難聴と認知症の関係に注目し、PROST に登録されたビッグデータを用いて難聴の程度と認知機能、難聴への介入(補聴器)の認知機能への影響、加齢性難聴に関する遺伝子変異に関して検討している。現在まで、3300例の登録があり、そのうち793例の純音聴力検査が利用可能であり、周波数別の聴力検査結果の入力を終了した。
高齢者における難聴についての解析を行うため、対象を60歳以上の322例に限定して解析した。認知機能の指標であるMinimental state examination(MMSE)の結果について、23点以下が認知機能低下とし、0.25~8kHzの周波数平均聴力が30dB以上を難聴ありと定義した。難聴発症と、認知機能低下、糖尿病、高血圧、飲酒、喫煙のリスクファクターを多変量解析したところ、難聴と認知機能低下は、オッズ比2.847(95%CI 1.605-5.050、p<0.001)と強い相関をみとめた。一方で、アルツハイマ-病の原因遺伝子のひとつとされるApoE4遺伝子多形との関連について検討したが、難聴とApoE4多形の関連はなかった。2者の関係性の方向として、ApoEは認知機能低下と関連することから、ApoEを介さず、難聴と関連していると考えられ、加齢性難聴発症が認知機能低下に影響すると考えられた。

ID情報
  • 課題番号 : 17K11318